有機加工食品の生産工程管理者・小分け業者として有機JAS認証を取得した株式会社「やがて」(兵庫県丹波篠山市北新町)が、同市殿町に加工場を立ち上げた。同市内で、有機加工食品の分野で有機JASに認証されているのは同社のみ。農業を手掛ける同社が、自社で栽培する有機農産物を使った加工品を製造し、食品ロス減など有機農産物の価値向上につなげる。
有機加工食品は、有機と認定された原材料を95%以上(水・塩を除く)使用し、有機JAS認証を受けた施設で製造される食品。原料を保管する容器には、有機と非有機の食材が交ざらないようシールを貼って明記したり、製造日、使用する原材料やその比率を記録したりするなど、推奨される多くの生産工程管理を徹底する。
これまでなら規格外となったり、廃棄したりしていた野菜の茎や根などを加工することで生かし、生産、流通、消費の面から新たな価値を付加するのが狙い。
同社で栽培する黒大豆や食用のバラ、トゥルシー(ハーブ)などの有機農産物を使った、黒豆茶やドライローズ、ハーブティーといった加工品を広く展開する。今後、有機農家から委託を受け、加工品を開発することも考えている。
加工場(約75平方メートル)は、同社敷地内の倉庫の中に設けた。元々事務所として使っていたプレハブは加工作業を行う「衛生区域」とし、乾燥機や粉砕機、スチームコンベクションオーブンなどの機械を充実させた。さらに食材の保管部屋、商品の梱包を行う部屋、「非衛生区域」とする入退室部屋を増築した。
衛生面には特に気を配り、菌が繁殖しやすいとされる温度を避けるため、野菜を瞬時に冷やす冷却機や金属検出機、手に触れることなく袋詰めができる真空包装機などの機器を取りそろえた。また、防虫、防鼠の観点から扉は二重に。入室時には▽手、携帯電話の消毒▽検温▽マスク、専用キャップの着用▽服のほこり取り―を行い、入室後にも手洗いと消毒を行う。
1年前に着手し、書類審査や検査員による実地検査を経て6月に完成した。コロナ禍の中、中小企業が新たに取り組む、付加価値を高める事業を支援する中小企業庁の「事業再構築補助金」を活用した。
同社代表取締役の黒瀬啓介さん(43)は「『丹波篠山』のブランド力は強い。産地で有機加工をし、そのブランドに新しい価値を付加し、やがては世界へ発信していきたい。有機生産者ともつながっていければ」と話していた。
有機JAS認証 生産工程管理者と小分け業者、輸入業者に与えられる国の認証。農産物や畜産物、飼料、加工食品が対象。認定機関による規格検査を経て、管理者を認証する。認証を受ければ、商品に「有機JAS」マークや、「有機」「オーガニック」などの言葉を表示できる。