「達身寺様式」と呼ばれる、下腹部が膨らんだ国の重要文化財12体、県文化財34体など、平安時代前期―末期の木の仏像79体を所蔵し、「丹波の正倉院」とも呼ばれる兵庫県丹波市の達身寺(渡辺正規住職)が、雨漏り寸前の本堂のかやぶき屋根の修繕費とその他運営費を集めようと、インターネットで支援者を募るクラウドファンディングを始めた。800万円の調達を目指す。毎年、檀家がかやを物納し、維持に努めてきたが、大掛かりな修繕が必要になり、広く寄付を募ることにした。「資金を調達するとともに、寺の存在を知ってもらうきっかけになれば」と、渡辺住職(47)は協力を呼び掛けている。
同寺が所蔵する貴重な仏像は文化庁の補助対象で、1973年に建設した宝蔵庫にまつられているが、本殿は市指定の文化財にすらなっておらず、公的補助の対象外。75戸の地元檀家が、毎年3束ずつ、市内のあちこちに出掛け、刈り取ったかやを収め、ふき替えや修繕に当ててきた。
直近では2017年に応急修繕。傷んだ所に手当をする対処療法を続けてきたが、傷みが目立ち、2面をふき替えることにした。
新型コロナウイルスの影響で、拝観客が減り、観光収入が減少。さらに、渡辺住職は今春、就任したばかり。式のために檀家は出費しており、続けざまに大きな負担はかけられないと、専門業者の見積もり1600万円の半額を、公募で調達することにした。
同寺は、開山時期が定かではなく、8世紀ごろに建立されたとされる。丹波の山奥の同寺に、古い仏像が多数残っている。理由も分からず、謎が多い寺。同寺の再興は、1712年。この時、本堂は別の場所から移築されたとみられ、築年数は不明。
渡辺住職は、「仏さん同様に、村の人が長く守って来てくださった本堂。1200年の歴史ある仏像と、かやぶき屋根を後世につなぐため、お力添えを。後々まで守っていけるよう、道筋をつけるのが私の役割」と話している。
筆頭寺総代の九後昌さん(80)は「トタンをかぶせてはという声もあるが、あの静かなかやぶきのたたずまいが良く、できる限り守りたい。昔のようにかやを刈れる場所がなくなり、また高齢化で年金暮らしの檀家が増える中で寺を守っている。わらにもすがる思い」と、協力を求めている。
クラウドファンディングは11月30日まで。詳細は「READY FOR 千二百年の歴史をもつ、謎多き仏像と達身寺を未来へつなぐ」で検索を。寄付は3000円から。額により、拝観券や御朱印、祈祷札、境内に名前やポスターの掲示などの返礼品を用意している。
同寺の目の前の畑で500万本のコスモスが揺れる「コスモスまつり」が開かれ、春には、寺近くのカタクリ園が公開されるなど、同寺は丹波市の観光地に立地している。