憧れのボートレーサーに 兵庫支部の山下拓巳さん 兄・大輝さんに続き 「勇気や希望与えたい」

2022.12.25
地域

兄の大輝さんに続き、プロのボートレーサーとしてデビューを果たした山下拓巳さん=兵庫県尼崎市の尼崎ボートレース場で

兵庫県丹波篠山市内在住の山下拓巳さん(21)が「兵庫支部」のボートレーサーとしてデビューを果たした。倍率約20倍の”超難関”と言われる養成所に合格。1年間の過酷な訓練を経て、プロとしての第一歩を踏み出した。兄の大輝さん(26)も、同じ兵庫支部に所属している。拓巳さんは「自分が幼い頃からレーサーに憧れていたように、いろんな方に勇気や希望を与えられるレーサーになりたい」と目を輝かせる。

11月12―16日に尼崎ボートレース場(同県尼崎市)で開かれた「名物尼崎あんかけチャンポン杯」でデビュー。計7レースに出場し、5着が2回、最下位の6着が5回だった。大金星とはいかなかったが、「フライングや転覆などの事故がなく、無事に終われたのが良かった」と安堵する。

2戦目となった、今月9―13日の「第30回4Kソリューションカップ」では計8レースに出場。4着が1回、5着が2回、6着が5回だった。

デビュー後の2戦で先輩から”洗礼”を受けた。今はスピードに慣れるために誰もいないレース場で、全速でコーナーを旋回する練習に励む。

競艇好きの父の影響もあり、水上で火花を散らすボートレーサーに幼い頃から憧れを抱いていた。「車の助手席に乗りながら、よくレーサーの真似をしていた。『いつかレーサーになるんだろうな』と思っていた」と笑う。

篠山鳳鳴高時代、同高校や、出身の西紀中の教諭から「挑戦するなら若い方が良い」と後押しを受け、進学せずにボートレーサーを目指すことを決意。卒業後、丹波篠山市内の焼き肉店などでアルバイトをしながら、トレーニングや勉強に黙々と励み、養成所の入所試験合格を目指した。

昨年5月、4度目の挑戦でついに合格。全国から1000人が受験し、合格者は52人だった。「2年間、同じ生活をしていたので、『やっと次のステップに進める』という気持ちだった」と振り返る。昨年10月、福岡県柳川市にあるボートレーサー養成所に入った。

毎朝6時に起床。操縦やモーター整備などの実技訓練や、学科の講義などを受け、午後10時に就寝するまで、ボートレースに関するあらゆる知識や作法をたたき込まれた。敬礼などの所作が少しでもずれれば、教官から厳しい指導を受けた。「毎日のように、『明日にはやめよう』と思っていた。夜に何回泣いたか分からない」と明かす。

しかし、やめようと思うたび、思い浮かんだのは兄の大輝さん。「負けられない」という思いを胸に厳しい訓練を耐え抜き、今年9月末、修了した。

進級試験で結果を残せなければ退学となるため、合格した131期の52人中、修了したのは半分以下の25人だった。

拓巳さんにとって大輝さんは「一番身近な先輩であり、ライバルとして意識する存在」という。「言葉は厳しいけれど、行動は優しい。社会人としてのマナーを教えてくれている。自分は大好き。向こうは分からないですけれど」と表情を崩す。

自身の強みに「レースが好きで、昔からたくさん観てきた。レースを俯瞰で見られること」を挙げる。

ボートレーサーは、男女合わせて約1600人。勝率に応じ、「A1」「A2」「B1」「B2」の4つの階級に分けられる。デビュー後はB2からスタートする。「まずはB1に早く上がりたい。ゆくゆくは、格が高いSG(スペシャルグレード)、G1(グレード・ワン)といったレースに継続的に出て、活躍していきたい」と夢を描いている。

弟の智己さんは、今年10月にボートレーサー養成所に入所。2人の兄の背中を追っている。

関連記事