「銀幕の詩」27日封切り 「住民運動で暴力団事務所を退去」実話を映画化 ヱビスシネマ。

2023.01.25
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映画「銀幕の詩」のポスターを手に鑑賞を呼び掛ける近兼監督=2023年1月19日午後4時、兵庫県丹波市氷上町成松で

住民運動で暴力団事務所を退去させた兵庫県丹波市氷上町成松の実話に着想を得た映画「銀幕の詩」(監督・脚本=近兼拓史さん)が27日、近兼さんが支配人を務める映画館「ヱビスシネマ。」(兵庫県丹波市氷上町成松)で封切り公開される。映画館を復活させる映画を撮るために、実際に映画館をつくり、まちに映画の灯をともした近兼さんは、「映画への愛を込めた。一度劇場がなくなったところから復活させるのが、どれほど大変なことかも身に染みた。『ヱビスシネマ。』は、すでにまちの『当たり前の風景』になっているかもしれないが、劇場は『あって当たり前』ではない。足を運び、劇場、映画っていいなと思ってほしい」と応援観賞を呼び掛けている。午後1時、6時の2回。2月9日まで(予定)。

暴力団事務所の出現と跡地活用問題という「丹波市最大のピンチ」をどう乗り切るかが見どころ。主役は、俳優が演じる丹波市総合政策課職員。市民と行政が力を合わせ、暴力団の立ち退きに成功し、その後の跡地活用に悩みながらも共に力を合わせ、映画館をオープンさせる物語。地元の中央小学校、氷上中学校の児童生徒のほか、市民エキストラが200人以上登場する。

「戎シネマ」「成松劇場」を懐かしむ声を住民から聞いた近兼監督が、事務所跡地を映画館に、と発案。自身の脚本づくりや、「跡地を映画館にする」を撮影するため、14年に成松連合区が買い取り、公民館にしていた事務所跡地の土地建物を取得。建物を改装し「ヱビスシネマ。」として21年7月に開館させ、半世紀ぶりに成松に映画の灯をともした。

当初の脚本では、クライマックスシーンは映画館の完成、開館だったが、撮影中に、「親が好きだった映画館をつくるのに役立ててほしい」と、市民から親の形見の指輪を売った現金の寄付があるなど、「想定以上の美談が続き」(近兼監督)、大幅に脚本を書き直した。

一昨年秋の完成予定だったが、何度も発令された緊急事態宣言など、新型コロナウイルスに翻弄され、撮影中断を繰り返した。この間に、丹波市の近代史、地理を調べ、市内を流れる加古川と由良川と共に栄え、生活してきたまちとの考察を深め、作品に反映させた。

昨年9月30日に、プレミア上映会を開いた後、再編集し、一部シーンを入れ替えた。上映時間は87分。

「ヱビスシネマ。」の後、「アップリンク吉祥寺」(東京都武蔵野市)、「元町映画館」(神戸市)などでの上映が内定。地方で映画の灯を守っている同志の劇場で上映してもらおうと、一度閉館に追い込まれながらも再開した「御成座」(秋田県大館市)、今年再開予定の「鶴岡まちなかキネマ」(山形県鶴岡市)などに足を運び、PR活動を展開。舞台あいさつの都合から、全国15館程度のミニシアターでの上映をイメージしている。

「現実の美談が脚本を超えたのを体感できる。これを全国の人に見てもらいたい。「『ユーチューブ』やサブスク動画の早送り、『TikTok』全盛の時代だけれど、映画館で映画を見るスローな文化が必要だと感じてもらえたら」と映画への愛を語った。

主演の3人と近兼監督らが上映後に舞台あいさつする。27日午後6時の回(松岡智子さん、芳野友美さん、近田球丸さん)、28日午後1時の回(一明一人さん)、29日午後1時の回(柴田由美子さん)。

前作「恐竜の詩」(18年)に続く、丹波市を舞台にした「メイド・イン・丹波映画」の第2弾。前作では、劇中登場する会社のシーンなどを撮影するために、空き物件を取得。現在、撮影・編集スタジオとして使っている。今作で映画館を取得。スタジオと劇場ができたことから、国際映画祭を開くため、鋭意準備を進めている。

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