28年前の阪神・淡路大震災発生直後、同じ兵庫県ながら被害の少なかった丹波篠山市内で、いち早く支援に動き、避難所におにぎりを届け続けた「ひおき愛育班」―。このほど市立城東公民館で当時を再現し、おにぎりを作る場面の撮影があった。班員らは当時と同じく、「笑顔であたたかい心を届けよう」と気持ちを込めておにぎりを握り、”あの日”に思いをはせた。
同愛育班は28年前、震災の発生を受け、分班長らが緊急会議を開催。「時間がたてば多くの支援があるはず。でも、直後はない。早く何かしないと」と考え、炊き出しのおにぎりを作ることを即断し、そのままおにぎり作りに入った。
米は約80人の班員が持ち寄り、漬物も添えた。被災地へ向かう社会福祉協議会の職員に預け、その日のうちに避難所に届けてもらった。それから40日間、毎日、おにぎりを握り続け、その数は1万個を超えた。
被災した高齢者を同市内の施設で受け入れることになった際にも入浴時の衣服着脱や食事介助などを行い、自分たちにできる支援に精いっぱい取り組んだ。
28年ぶりのおにぎり再現は、震災を経験した人々の思いを伝えるNHKのシリーズ「あの日を胸に」の撮影で実施。同シリーズは、震災を経験した人や、当時、ボランティア活動を行った人、震災を機にさまざまな活動を始めた人などを取り上げ、それぞれの思いを伝える。
撮影では当時を再現し、現在の班員ら14人がおにぎり作りにいそしんだ。当時の班長・藤木千皓さん(93)も参加し、「あの時は震災でみんな動揺していたけれど、『あたたかい心を届けよう』と言いながらおにぎりを作ることで、少しずつ落ち着いていった。震災を知らない人も増えてきたからこそ、あの時のことを知ってほしい」と言い、「懐かしい。思い出したら泣けてきた」とおにぎりを作りながら、声を震わせた。
班員の顔ぶれも変わり、撮影に臨んだ人たちの中で、あの日を知る人は藤木さんのみ。現班長の小野靜さん(74)は、「当時の皆さんの活動はすごいことで、行動することの大切さを学んだ。私たちも何かあれば、できることに取り組んでいきたい」と話していた。
番組内で藤木さんは、「あの時の笑顔が私を支えています。みんなが心豊かに暮らせますように」との声を寄せ、「ボランティアはさせていただくもの」と言葉を添えている。