亡き祖父母も麹作り応援
丹波市市島町の西山酒造場で杜氏見習いとして働いていたが、体調を崩し、やむなく退職。酒造りの現場から離れたこうじが、「麹は自分のアイデンティティ」であることを再確認し、酒造りにとって重要な工程の一つでなりわいある麹作りを生業とすることを決意、一昨年6月、市島町上竹田にある母親の生家で「おかしなこうじや」を開業した。市内の農家から仕入れた米などを使って、手作業で麹を作っている。
神崎郡市川町の出身。姫路工業高校の工業化学科で学び、微生物や発酵に興味を持った。在学中、麹の種菌メーカーの息子を主人公にした漫画「もやしもん」を、「今もバイブル」と言うほどに愛読したことも手伝い、興味が深まった。高校卒業後、酒蔵で働きたいと思ったが、就職先が見つからずにいた。そんな時、母親が出身地にある西山酒造場に電話。面接をしてくれるよう嘆願し、同社への採用が決まった。同社では、酒造りはもちろん営業、商品開発などにも従事し、10年間働いた。「いい勉強をさせてもらいました」という。
麹への愛着に加え、丹波を離れたくないとの思いもあり、空き家になっていた母親の生家を改修し、「おかしなこうじや」を立ち上げた。「西山酒造場時代に知り合った人たちや妻の協力のおかげです」と感謝する。開業から1年半。有機米の米麹、黒麹、蕎麦麹なども作る。「独自に開発した製法で、日本一甘い米麹を作っています。甘さにかけては自信があります」と胸を張る。
母親の生家は、西山酒造場で働き始めた頃、当時健在だった祖母と一緒に暮らした所でもある。「亡き祖父母が、私の仕事を応援してくれていると思います」と言う。32歳。