2023年の干支は「卯」―。元動物園の飼育員で、元ペットショップ店員の栗林真理さん(38)=兵庫県丹波市氷上町=は、売れ残ったウサギを引き取って飼育するうちに数が増えたため、快適に育てられる環境を求めて同県宝塚市から引っ越してきた。現在、30匹と暮らしている。運動をさせられる屋根付きの土間があり、近所の人から「おやつ」の野菜をもらえ、主食の草も確保しやすい田舎を気に入っている。
体重が1キロほどの最小品種で、「ピーターラビット」のモデルといわれるネザーランドドワーフ、垂れ耳のロップイヤーなどのミニウサギ(雑種)を飼っている。雄と雌は別室、雄は1匹ずつ、雌は仲が良ければ複数匹を同じケージで飼っていて、順に土間に放して運動させ、体調を見る。
「脚ダン」という垂直跳びをするときは、ハイテンション。姿勢を低くし、尻尾を立てているときは、怒っている。呼べば戻って来る犬みたいなウサギもいれば、触られるのが大嫌いなウサギもいて、それぞれに個性があるという。
「ウサギは抱っこが嫌い。猛禽類に持ち上げられるような気になるからか、地に足がついていないと落ち着かない。体調が悪くても、弱みを見せると食べられると思っているので、弱みを見せない。体調の見極めが、とても難しい。本当にヤバいときは『キーキー』と鳴く。生死をさまようくらいのヤバさ」
毛づくろいをするが、毛が吐けず、草、繊維質を食べて体外に排出する。繊維質が足りないと、ふん詰まりになり、ガスがたまる。「30匹いるので、どれかが調子が悪くなる」。人の薬を与えたり、湯を飲ませたり、お腹をマッサージするなどし、消化を助ける。病気を防ぐサプリメントも与えている。
重労働で体を壊し、動物園を退職した後、ペットショップの裏側をのぞこうと、3年間働いた。「売れなかったときの扱いが最悪」と、2014年に最初の1匹を引き取ったのを始まりに、次々と引き取った。宝塚市の自宅の6畳間で23匹を飼育。「ウサギ様のために家を探し」、現在の物件にたどり着いた。
少し目を離した隙に交尾し、ピーク時は40匹にまで増えた。全てに名前を付けており、親子関係を把握するため、ダージリン、セイロン、アールグレイなどの「紅茶シリーズ」、霞、雪、霙(みぞれ)、雫など、「雨冠シリーズ」といった具合に、分類し命名している。
ウサギの主食は市販のカリカリの餌と乾いた草。「雑草がウサギにとって米のようなもの」。キャベツやニンジンは「おやつ」。サツマイモのつる、丹波黒枝豆の葉、茎も「おやつ」。大根の葉、小松菜はいくら与えてもいいが、キャベツは与え過ぎると病気になり、シュウ酸を含むホウレンソウは禁忌。
飼っているウサギを見てもらい楽しんでもらいたい思いはある。「抱っこは嫌がるけれど、なでられるのは好きなウサギもいる。ウサギにかかる負担が少ない方法で、何かできればいいな」と話している。