兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市今田町上立杭)で、特別展「教えて!兵庫陶芸美術館―収集と展示のQ&A」が開かれている。2005年の開館以来初めてとなる、美術館自体を紹介する企画。特色あるコレクションの逸品をまとめて紹介しながら、県内唯一の“やきもの専門美術館”ならではの工夫を、学芸員が実際に使っている道具なども展示しながら伝えている。また、17回目となる著名作家招聘事業×テーマ展も同時に始まり、岡山・備前を拠点に活躍する作家・矢部俊一さんの個展「空刻」が開かれている。いずれも2月26日まで。
特別展出品作は77点。ひょうご五国のやきものをエリア別に展示しているほか、現代陶芸、著名作家招聘事業で招いた作家の作品などが並ぶ。同館の収蔵品は年々増えており、2021年度で3157件に上る中、近年収蔵され、今回初披露となった作品もある。
また、調査・研究に必要な専門道具類も陳列。メジャーや調査用紙、カメラ、ペンライトなどは、同館学芸員愛用の“7つ道具”。作品が倒れないよう固定するためのテグスや重り、滑り止めといった、陶芸美術館ならではのものも。作品を運ぶハンドリフトや台車なども並んでおり、「こんなものまで並べるのか、と興味深く見てもらえるのでは」と三木哲夫館長。これまでの企画展のチラシを壁面一面に貼ったコーナーもある。
展示に合わせ、子ども向けのリーフレットを作成しており、県内から訪れる小学生らに配布している。学芸員の村上ふみさんは「社会の中での美術館の役割を、未来の美術館利用者にも伝えたい」と話している。
◆備前の作家・矢部さん 「空刻」展も
テーマ展は矢部俊一さんの作品14点を展示。矢部さんは名古屋芸術大学彫刻科で学んだ後、備前に帰郷して陶芸の道へ。自ら改良した備前の土に現代彫刻の技法を掛け合わせることで、鋭く緊張感のあるフォルムを追求している。
水草をイメージしたオブジェ150個を天井から透明の糸でつり下げた「記憶のかけら」は、白い壁にオブジェの影が揺れている。また、人間国宝だった祖父、山本陶秀さんが、戦時中に制作していた陶製手りゅう弾とその破片を、映像を組み合わせて展示し、世代を超えたコラボレーションも行っている。
矢部さんは「備前の代表として恥ずかしくない作品をと思っている。丹波も備前と同じ伝統的な産地。丹波焼の作家の方にも見ていただき、お互いに影響を与え合えたら」と話している。