小さなイベントホール完成 そば店主が私財投じ小屋改修 「多くのつながりを」

2023.01.23
地域

「9614ホール」の完成を喜ぶ藤本さん(左から2人目)と、ねじき蕎麦のスタッフら=兵庫県丹波篠山市今田町黒石で

兵庫県丹波篠山市最西部に位置する今田町黒石で小さなイベントホール「9614(クロイシ)ホール Time House」が完成した。そば店「ねじき蕎麦in時夢館(タイムハウス)」店長の藤本定一さん(70)が私財を投じ、店の向かいで長く放置されていた作業小屋を改修。藤本さんの友人による演奏会や落語会などを不定期で開く。このほど、完成を記念したセレモニーが行われた。藤本さんは「多くのつながりが生まれる場にしたい」と願っている。

ホールの広さは約50平方メートル。収容人数は50人程度。スギ材を使い、山小屋をイメージした温もりが感じられる空間に仕上げた。大きめの窓からは、山々や田園風景が一望できる。障がいのある人でも入れるよう、入り口にはスロープを設けた。

ホールの隣には、プレハブで出演者の楽屋(約10平方メートル)を新設。椅子や鏡、ハンガーラックなども置いた。

「9614」というホール名は、藤本さんが生まれ育った黒石集落をもじった。

今後、交流のある落語家の笑福亭銀瓶さんの落語会や、クラリネットやバイオリン、ハーモニカのコンサートの開催などを考えている。イベントの運営は、同店スタッフが担う。

完成記念セレモニーで、あらいさんと井川さんの演奏に耳を傾ける来場者たち

改修した作業小屋と、隣接する2階建ての民家は、20年ほど前までは、所有する大阪の男性がセカンドハウスとして使い、農作業を楽しむなどして田舎暮らしを満喫していたが、男性の逝去後は放置されていた。

かねてから店の駐車場を広げたいと考えていた藤本さん。当初は向かいの敷地の一部を駐車場にしたいと男性の親族に打診した。その際、親族から民家と作業小屋(計約300坪)の購入も持ち掛けられた。

同店内でたびたび、落語会やオカリナの演奏会などを催していたが、スペースが狭く、イベント会場が欲しいと考えていたこともあり、作業小屋を改修し、イベントホールにできないかと思い立った。昨年1月に逝去した妻の保子さんの「思うようにしたら良い」との後押しもあり、購入に踏み切った。

市内の工務店に依頼し、昨年6月から改修がスタート。市の空き家活用支援事業の助成金も活用し、11月に完成した。改修前は、家具や農機具などが散乱し、竹や雑草が繁茂するなど、目も当てられない状態だった。

完成記念セレモニーには藤本さんと親交のある、銀瓶さんや元フリーアナウンサーの桶村久美子さん、元朝日放送ラジオ編成局長の川崎宏さんら約50人が参加。地元のハーモニカグループ「にじいろハーモニー」と、あらいなおこさん(ハーモニカ)、井川ユミコさん(アコーディオン)のデュオがそれぞれステージを披露。銀瓶さんらも藤本さんとの過去のエピソードを披露するなどして沸かせ、来場者同士が交流した。

藤本さんは「インターネットの時代は止められないが、人は出会い、顔を合わせてこそ、ネットワークが広がっていくのでは。ご飯を食べたり、お酒を飲んだりしながら、『次は何をしようかな』と、みんなで考えていきたい。そして、助け合える仲間をつくってもらいたい」と力を込める。

購入した民家は、近くに住む若手に貸し出し、自由に使ってもらうという。同店駐車場の収容台数は8台分増え20台。

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