空き家4000棟を実態調査 空き家増もバンク登録物件は減 対策計画改定へ

2023.01.10
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自治会からの情報提供などに基づき実施している空き家実態調査=兵庫県丹波市内で

兵庫県丹波市が、来年度改定する「空き家対策計画」の資料にしようと、8年ぶりに市内の空き家実態調査を進めている。前回2015年の実態調査では空き家2716棟を確認した=表1。今回は約4000棟を調べている。数の増減や管理状況をつかみ、管理不全対策や、利活用対策などにつなげる。前回は、半数超が問題のない空き家だった。一方、市の空き家バンク「住まいるバンク」への登録物件数は減っており、「空き家は増えているのに、物件が少ない」ミスマッチが生じている。

(表1)市内の空き家の状況(2015年度の空き家実態調査より)

自治会長からの情報提供や水道の開栓状況などに基づき、調査員が外観目視調査。A「問題なし」、B「注意が必要」、C「管理不全」―に分類する。集合住宅は調査対象外。前回はAが55%、Bが27%、Cが18%だった。

実態調査の基礎資料を集めるため、昨年度、自治会に状況調査を依頼。1629戸と報告があった=表2。14年度に同趣旨で行った調査時より、391戸、約32%増加。柏原以外の旧町域で増えた。自治会調査では、うち60%が「適正管理」と判定された。14年調査時は70%が「適正管理」だった。自治会役員の主観による分類であり、評価の厳密性を割り引いても、適正管理の割合は低下傾向。

(表2)自治会による調査(2021年)

使える物件が多数ある一方で、「住まいるバンク」の登録物件数は減っている。コロナ前は130ー150件程度あったが、100件を切っている。バンクのホームページは閲覧数が多く、新規物件を掲載すると、見学希望が入る。

新型コロナによる脱都市指向もあり、一昨年は過去最多の59件、一昨昨年も50件が成約。同バンク物件を購入するなどし、市移住相談窓口を通じた移住数も、一昨年は77世帯163人と過去最多。昨年も11月末までで52組124人と、コロナ禍前と比べ、2倍以上に増えている。乏しい選択肢の中から物件を選んでいる。

掲載件数の減少について、市内の不動産業者は、「好まれる、手を入れずに住める物件が少ない。リフォーム費用が高額になりそうなものが多く、手頃な空き家がなかなかない」と言う。また、「需要はあるが、相場は下がっている」とも。気に入った物件でも飛びつかず、値段が下がるのを待っているのだそうだ。また、仏壇や位牌を置いたままの物件は好まれず、片付けが終わった家でないと、売れにくい。「ぽつんと一軒家」のような所を好むのは少数で、崖崩れや、洪水の心配のない場所が選ばれる傾向にあるという。

別の不動産業者も「コロナの追い風で、これまでなら売れないだろうというような家も売れたが、安かった。次から次へと空き家は出てくるが、仲介を頼まれる物件はそう増えない。家は家族の思い出の場所。その気持ちも分かる。一方で、手放すなら少しでも状態が良いうちに」と助言する。

(表3)管理不全空き家への対応

空き家の管理を巡り、近隣住民から市に苦情が届き、毎年50ー70件程度、現地確認をしている=表3。放置すれば倒壊など保安上の危険があったり、衛生上、有害となる恐れのある建物などを指定する「特定空き家」は、86件指定したが、除却(取り壊し)などが行われたのは半数強。特定空き家未満で問題がある物件の所有者に管理依頼通知を出しているが、改善されるのは4分の1程度。家が傷むと、所有者も関わるのを避け、負の財産になりがちだ。

市は、▽空き家の外観調査や点検、宅内清掃、通風、建築資材などの飛散・はく落防止、除草などに最大5万円を上限に補助する「空き家適正管理促進事業補助金」▽50万円を上限にバンク登録物件の改修費を補助する「空き家利活用促進事業補助金」▽バンクを利用して売買(賃貸借)契約をした空き家の元所有者に、不動産業者に支払う仲介手数料の一部補助(上限5万円)、家財道具の撤去費(同)を補助する「住まいるバンク活用促進事業補助金」―などを設けている。

空き家に関する相談は、市移住相談窓口(「たんば移充テラス」で検索を)、仲介に関する問い合わせは不動産業者へ。物件情報は「丹波市住まいるバンク」で検索を。

市は、実態調査で空き家を特定した後、所有者にアンケートを取り、計画策定に生かす。

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