希望の夢次代につなぐ
2014年の丹波市豪雨災害で、谷あいの耕作放棄地同然の田んぼが被災。災害残土を4万立方メートル受け入れ、最大10メートルかさ上げし、2・3ヘクタールの丹波栗園として復興した。うまく育てれば、丹波市最大級のクリ園になる。
クリ生産に明るい人がいたわけではなく、高い理想があったわけでもない。田んぼに復旧しても、元々条件が悪い土地。管理がしやすい軽緩斜地にすることを思い付いた。ブドウやモモは栽培が難しく思え、JAや普及センターの応援が得られるクリ栽培に賭けた。
県、市、JAの補助を活用し、2018年度に約650本を新植したものの、翌年、約500本が枯死。1度目は業者に任せたが、部会員の手で2年かけ約400本を植え直した。植え床は災害残土。掘ると、巨石がゴロゴロ出てきた。「石を動かすのが、一番しんどかった。二度としたくない」
昨年、初めてクリを売った。3万円の売上は、草刈り機の歯代の費用弁償に充てた。5年間収入がなく、草刈り機の燃料代すら一度も払えたことはなかった。手弁当で、最低でも毎月1度、次の世代のために汗を流し、冬の寒さに凍えながら、手入れを続けている。
部会員は、今中自治会の8人。全員が高齢世代。自分たちの代で果実を得ようとは思っていない。「もうからないことを下の代にさせるのはつらい。幸い丹波栗は、10アールで所得30万円が可能と言われている。2ヘクタールで600万円。ほらではなく、正夢。希望の夢を、次の世代につなぎたい。そして、次の世代の人たちに、水や空気、今中の農村環境を守っていってほしい」と力を込めた。72歳。