社会福祉現場の第一線で活躍する若手職員を表彰する「社会福祉ヒーローズ」のファイナリスト6人によるプレゼン全国大会が2月28日に東京都内であり、兵庫県丹波篠山市福住の介護老人福祉施設、やまゆりの里に勤める介護福祉士、稲葉夏輝さん(35)=京都府亀岡市在住、京丹波町出身=が、最優秀の「ベストヒーロー賞」に選ばれた。当日、施設内では、利用者からの「見たい」という声に応え、大画面で大会の様子を見る「パブリックビューイング」を企画。利用者やスタッフが、稲葉さんを応援する手作りのうちわを持つなどし、見守った。
稲葉さんは同大会で、フォロワー数が延べ3万人を超える交流サイト(SNS)で、施設の日常を発信し、介護の仕事の魅力を伝える取り組みを発表。ベストヒーロー賞に選ばれた瞬間、施設内には歓声が沸き起こり、利用者やスタッフが喜びを分かち合った。中には、涙をこぼすスタッフもいた。
施設長の首藤風さん(49)は「練習に付き添ってきたので、『言い間違えるなよ』と、ハラハラしていた」と笑う。「ベストヒーロー賞は『取れる』と思っていた。発表の瞬間、『福住』と読み上げられたときは『よっしゃ』となった」と喜んだ。
6人のファイナリストが1人ずつ、およそ10分間のプレゼンを行った。大学教授や福祉関係の起業家ら6人と、オンラインで視聴する大学生や専門学生らによる投票で選ばれた。
2018年から、スタッフ不足に悩んでいた施設のPRに、スタッフが撮影した利用者の日々の写真をインスタグラムで発信。毎日のように投稿を続けており、フォロワー数は、インスタグラムは2万人、ティックトックは1・5万人を誇る。
フォロワーが増えて知名度が向上したことから、北は青森、南は福岡まで約15人のスタッフが施設に入職。退職者も減少し、好循環を生んだ。
大会では「利用者さんの笑顔という『SNS映え』を意識して仕事をしている。笑顔を引き出すには日々信頼関係を築き、その人の夢をかなえる必要がある。SNS映えを意識した発信は、福祉の本質に近づくのでは」と語った。
最高賞の受賞に稲葉さんは、「施設のみんなでやってきた取り組みが評価されたことが一番うれしい」と喜び、「利用者さんや協力してくれる仲間ら、関わってくれている皆さんに感謝。これからもスマホを使い、介護の魅力を発信していきたい」と誓っていた。