兵庫県丹波篠山市の三大秋祭りの一つ、春日神社(同市黒岡)の秋祭りで城下町を巡行する9基の鉾山(ほこやま)のうち、2基の屋根に載る鉾の修復が完了し、約110年前の姿を取り戻した。19日、同市の河原町通りで「お披露目巡行」があった。澄み切った青空の下、多くの地元住民や観光客らが足を運び、”復活”を祝った。
修復されたのは、下河原、小川の両町の「鳳凰山」と上河原町の「三笠山」の鉾。鳳凰山の鳳凰の顔は、岩絵具や胡粉などを使い、彩色を施した。色褪せていた鉾頭はきらびやかな金色に。あみは安全面を考慮しながら当時の姿に戻すべく、竹を使った。
お披露目巡行では、着物姿の子どもたちが鉾山に乗り込み、元気よく囃子を披露。大人たちが鉾山を牽引した。
明治期に電線が張り巡らされた影響で、鉾を屋根に取り付けた巡行ができなくなり、不完全な状態が続いていた。2021年に河原町通りが無電柱化されたことを契機に、「時代と共に失われていった大切な風景を一つずつ取り戻したい」と、住民有志らで「鉾復活実行委員会」(川内隆志委員長)を立ち上げ。賛同者から資金を募るクラウドファンディングや国、市の補助などを活用し、京都や地元の業者に修復を依頼して実現させた。
実行委員の一人は「感極まり、自然と涙が出た。これが本来の祭りの姿。残り7基にも鉾を載せるのが最終目標。祭りの担い手不足も深刻だが、私のように祭りが好きになり、地域に定着してくれる人が増えてくれれば」と話していた。