「生きた化石」に卵 透き通る体にびっしり 希少淡水魚スナヤツメ

2023.04.12
地域自然

透き通るような体にぎっしり卵を持つスナヤツメを見つめる寄付者の足立蓮さん=2023年4月6日、兵庫県丹波市青垣町山垣で

青垣いきものふれあいの里(兵庫県丹波市青垣町山垣)の水槽で、3億年前から姿を変えず「生きた化石」と言われる淡水魚、スナヤツメ(環境省レッドリスト「絶滅危惧Ⅱ類」、県版レッドリストBランク)がお腹に卵を持っているのを飼育担当者が見つけた。全長12センチほどの体は透き通っており、体の半分ほどに、シシャモのような淡い黄色の卵がびっしり詰まっている。スナヤツメを寄贈した児童が6日、成長した姿を見学。子孫繁栄を願い、近く捕獲した場所付近に放流する。

市内の小学6年生、足立蓮さんが昨秋、学校近くの加古川の水たまりで幼魚を見つけ、同施設に寄付した。飼育員の西垣一成さんによると、水槽底の砂に潜り、めったに姿を現さなかったが、年明けから泳ぐ姿を見かけるようになった。

4年目の秋に変態して成魚になるとされる。変態後は、目が見えるようになる一方で消化管が退化し、餌を食べなくなる。年明けから餌を食べず、3月下旬に卵を持っているのに気づいた。

1尾しかおらず、水槽で産卵しても無精卵。産卵で生涯を終えるため、希少種を水槽の中で死なすのは忍びないと、雄との出会いに期待し、川に戻すことを決め、足立さんと別れの面会を設定した。

足立さんが捕まえた半年前は、目が見えておらず、7つのえら孔の「ななつ目」だった。成魚になり「やつ目」になり、卵を持ったスナヤツメと対面した足立さんは、「すげー。卵がいっぱい」と興奮。砂に潜って姿が見えないスナヤツメに、アカムシの死骸などの餌を与えて世話をした西垣さんは、「貴重な体験をさせてもらった。飼育員冥利に尽きる」と感動していた。

淡水魚に詳しい、神戸市立須磨海浜水族園の長田信人さんは、「変態後は生殖に特化した体になり、雄は精巣、雌は卵巣が膨らむ。卵を持つ姿を見られるのは、かなり珍しい」と話している。

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