”看板”はベーグル 元市職員が農福連携事業所 「土に触れ、心の安定を」

2023.04.23
地域

看板の一つとして販売しているベーグル

兵庫県丹波篠山市小枕で一般社団法人「襷(たすき)農園」が4月から、障がいのある人が農業を通して社会参加する「農福連携」の就労継続支援B型事業所「たすきファーム」を開設した。黒大豆や山の芋などの栽培を通し、土に触れ、作物を育てる喜びを得ながら作業を行うほか、たくさんの人と交流することを目的に、〝看板〟の一つとして「ベーグル」を製造。地場産、国産にこだわった素材で作り、一日20個限定で販売する。スタッフらは、「いろんな人が集い、心穏やかにゆったりと過ごしてもらえたら」と笑顔で話している。

事業所では地域の人から借りた田畑などで、黒大豆や山の芋、ミニトマトなどの栽培に励むほか、施設外就労として、市内の大型農家のもとに赴き、作業を手伝う。育てた作物は市内の飲食店などに販売する。

ベーグルは平日の午後1時から販売中。北海道産の小麦を使うなど、素材は無添加にこだわる。「プレーン」(200円)、自分たちで栽培した黒大豆の煮豆を使った「黒豆」(210円)、「チーズ」(240円)の3種。

農福連携に取り組む「たすきファーム」の橋元さん(左)やスタッフら=兵庫県丹波篠山市小枕で

調理師で、趣味でベーグルを作っていた職業指導員の梶原美緒さん(41)が担当し、他のスタッフの意見も取り入れながら試行錯誤した。梶原さんは、「普通のベーグルよりも少しやわらかめ。年齢を問わず、いろんな人に味わってもらいたい」とほほ笑む。

法人を立ち上げたのは、元市職員の橋元工さん(54)。日本福祉大学を卒業し、社会福祉課や市社会福祉協議会への出向など、30年間のキャリアの半数を福祉部門で過ごした。社会福祉士や精神保健福祉士の資格を持つ。

さまざまな条例制定などに関わり、障がいのある人も生き生きと暮らせるまちづくりに取り組む中、管理職になってから、「やはり自分は現場で実践的に働くのが本望」と考えるようになり、社会福祉課長を最後に退職。福祉を仕事にすることに、「大変なことも多いけれど、どう自立につなげていくかを共に考えることが楽しい」と目を輝かせる。

非農家ながら農福連携を掲げたのは、丹波篠山ブランドを持つ特産品があることはもちろん、職員時代からプライベートで農作業をしたり、児童養護施設の子どもたちと黒豆作りをしたりし、「土に触れる」ことが心の安定につながり、誰かと共に作業することでコミュニケーションになると感じたからという。退職後、農家のもとで修業し、一から農業を学び直した。

名称は、「駅伝のたすき」から。「利用者の自信や自立を後押しし、思いを未来につないでいきたい」と熱く語る。

定員は15人で、利用時間は平日午前9時半―午後3時半。ベーグルは売り切れ次第終了。国道372号線「小枕西信号」近くの青い屋根が目印。

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