青垣いきものふれあいの里(兵庫県丹波市青垣町山垣)の水槽で、3億年前から姿を変えず「生きた化石」と言われる淡水魚、スナヤツメ(環境省レッドリスト「絶滅危惧Ⅱ類」、県版レッドリストBランク)がお腹に卵を持っているのを飼育担当者が見つけた。全長12センチほどの体は透き通っており、体の半分ほどに、シシャモのような淡い黄色の卵がびっしり詰まっている。スナヤツメを寄贈した児童が6日、成長した姿を見学。子孫繁栄を願い、近く捕獲した場所付近に放流する。
市内の小学6年生、足立蓮さんが昨秋、学校近くの加古川の水たまりで幼魚を見つけ、同施設に寄付した。飼育員の西垣一成さんによると、水槽底の砂に潜り、めったに姿を現さなかったが、年明けから泳ぐ姿を見かけるようになった。
4年目の秋に変態して成魚になるとされる。変態後は、目が見えるようになる一方で消化管が退化し、餌を食べなくなる。年明けから餌を食べず、3月下旬に卵を持っているのに気づいた。
1尾しかおらず、水槽で産卵しても無精卵。産卵で生涯を終えるため、希少種を水槽の中で死なすのは忍びないと、雄との出会いに期待し、川に戻すことを決め、足立さんと別れの面会を設定した。
足立さんが捕まえた半年前は、目が見えておらず、7つのえら孔の「ななつ目」だった。成魚になり「やつ目」になり、卵を持ったスナヤツメと対面した足立さんは、「すげー。卵がいっぱい」と興奮。砂に潜って姿が見えないスナヤツメに、アカムシの死骸などの餌を与えて世話をした西垣さんは、「貴重な体験をさせてもらった。飼育員冥利に尽きる」と感動していた。
淡水魚に詳しい、神戸市立須磨海浜水族園の長田信人さんは、「変態後は生殖に特化した体になり、雄は精巣、雌は卵巣が膨らむ。卵を持つ姿を見られるのは、かなり珍しい」と話している。