兵庫県丹波篠山市出身で、プロ野球・千葉ロッテマリーンズに所属する中森俊介投手(20)が、待望の1軍デビューを果たした。3月31日に敵地で行われた福岡ソフトバンクホークスとの開幕戦で初登板。5日にホームで行われた北海道日本ハムファイターズ戦ではプロ初勝利を挙げた。6日まで3試合に登板し、中継ぎとしてチームに貢献している。中森投手は「2年間、全然投げられていなかったので、ほっとした」と胸をなでおろし、「今年はけがなく、1軍の試合でたくさん投げたい」と誓っていた。
開幕戦では六回裏、先発の小島和哉投手が3点を奪われた後、1死走者なしの場面に2番手でマウンドに上がった。最初の6番・中村晃選手の打球はセカンドへのゴロとなり、中村奨吾選手のファインプレーで打ち取った。続く7番・アストゥディーヨ選手は148キロのストレートでファーストへのファールフライに抑え、記念すべき初登板の試合を無失点に抑えた。
中森投手は「流れがホークスに行っていたので、しっかりと2人で抑えて流れを切りたいと思った。緊張はなかった。出来はまずまず。結果的に抑えられたのが一番良かった」と冷静に振り返った。
2日のソフトバンク戦は1点ビハインドの六回裏、3番手として登板。1イニングを投げて被安打は1、無失点の好投を披露した。
5日は七回表、0―0の緊迫した場面に2番手で登板。1イニングを投げ、1失点を喫したものの、2つの三振を奪う力投を見せた。直後の七回裏に味方が2点を奪って逆転。試合はそのまま2―1でロッテが勝利し、勝ち投手になった。
試合後には約2万4000人のホームの観客を前に、初めて「ヒーロー」としてお立ち台に上がった。「僕だけが失点してしまい、複雑」と言いながらも、「やっとファンの方の前で投げられてうれしい」と喜びを口にした。インタビュアーに質問を聞き返す天然ぶりを発揮する場面もあり、ファンの笑いを誘っていた。
中森投手の後援会長を務める遠山満さん(72)は、「めちゃくちゃうれしいが、ここからが始まり。はしゃぎすぎて過度にプレッシャーをかけないよう見守っていきたい。けがをして野球人生が終わることもある。焦らず、ぼちぼちと頑張ってほしい」と話していた。
中森投手の父、博さん(44)は、「甲子園に出場していた頃から、緊張感を楽しめるぐらい度胸がすわっている。これから投げるたびに僕らの方が緊張することになると思う」と笑い、「3年目でようやくスタートラインに立てた。打ち込まれることもあるかもしれないが、そんなときこそ平常心を維持し、一人前の投手になるための通過点と捉えて」とエールを送った。
母の美幸さん(44)は「試合を観るたびに手をたたいて応援していて、登板が終われば号泣している。息子(長男の竜太さん)からは『何回泣くねん』と言われている」と苦笑。「本人も言っていたように今は野手の方に助けてもらっている。今度は野手を助けられるよう、自分の納得できるピッチングをしてほしい」と話していた。
2年目まで故障に泣かされ、1軍公式戦での登板はなかった。3年目の今年はキャンプ、オープン戦でアピールに成功し、初めて開幕1軍メンバーの座をつかんだ。今は中継ぎとして、プルペンを支えている。
中森投手は丹波新聞社の取材に、「中継ぎでも先発でもやるべきことは変わらない。バッターを一人一人抑えて次につなげる。今は先発にそこまでこだわりはない。それ以上に、たくさんの試合で投げたい」と力強く語った。丹波地域のファンには「たくさんの試合に投げて自分が活躍している姿を見せるのが、応援してくださっている方への恩返しになり、チームの勝利にもつながる。チームを優勝に導くため、その一員になれるように頑張る」とメッセージを送った。
◆中森俊介(なかもり・しゅんすけ)◆ 右投げ、左打ち。182センチ、90キロ。背番号56。福住小学校時代に「多紀野球少年団」に入団。篠山東中学校では軟式野球部に所属し、3年夏からは兵庫県三田市の硬式野球チーム「三田ボーイズ」でもプレー。同県の明石商業高校では、1年夏からベンチ入りを果たし、春夏合わせて4回、甲子園に出場した。2年時には春夏共にエースとして活躍し、チームを4強へけん引。2020年のドラフト会議でロッテから2位指名を受けた。一昨年には丹波篠山市のふるさと大使に就任した。