農家直営の焼き芋屋オープン 壺の中でじっくり焼く 芋スイーツてんこ盛り

2023.04.27
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壺の中で焼き上げた自慢の焼き芋を手にする大坂さん=兵庫県丹波篠山市二階町で

兵庫県丹波篠山市西紀南地区を拠点に農業を営む大坂宇津実さん(29)が29日、同市二階町で農家直営の焼き芋店「恋々芋(ここいも)」をオープンする。糖度を高めるため、100日間熟成させたサツマイモを壺の中で焼き上げた逸品を販売。就農7年で当初から描いていた「6次産業化」と「店を持つ」という目標を達成した大坂さんは、「作物を作るところからこだわり、農家直営だからこその商品を提供したい。丹波篠山で収穫した芋のおいしさを味わってほしい」と言い、「『食』というツールを使って、地域の盛り上げにも一役買えたら」と笑顔で話している。

使用する芋は全て自家栽培で、メインの「紅はるか」は甘みが強く、ねっとりとした食感。鮮やかな紫色の「ふくむらさき」は甘さ控えめ、「金時」はほくほくとした懐かしい味わい。

熟成させた芋を、炭火を入れた壺の中で焼くことで、遠赤外線と熱の対流で表面はぱりっと、中はじっくりと焼きあがる。「古式壺焼き」と銘打っており、歴史あるまちの空気感に寄せた。

壺焼きの様子

100グラム250円で販売しており、1本当たりおよそ550円。3本買うと1本無料で、「自分で作っている農家だからできる」と笑う。

焼き芋にとどまらず、干し芋(平=430円、丸=580円)や、「冷やし芋」(500円)、豆乳とサツマイモを使った「恋々芋ソイシェイク」(680円)、焼き芋にアイスクリームをのせた「壺焼き芋アイス」(650円)と、とにかくサツマイモを使ったスイーツがてんこ盛りだ。

合わせて▽サツマイモ▽キュウリ▽大根▽うずらの卵―の「ピクルス」(酢漬け)も販売。「丹波ピクルス」の名でブランディング化にもこだわっており、おしゃれな瓶詰めピクルスを贈答品などにも利用してもらいたいと考えた。黒豆を使った「黒豆だれ」なども販売している。

29日から城下町でオープンする「恋々芋」

大阪市出身の大坂さんは、神戸大学農学部に在学中、授業の一環で丹波篠山を訪れ、農家に“弟子入り”。「農」の奥深さと楽しさ、そして、住民の温かさに触れたことで、農を生業にしたいと移住し、2017年には新規就農を果たした。

少しずつ作付面積を増やし、21年に株式会社「AGRI STREET」として法人化。3人を雇用し、10ヘクタールで主力の黒枝豆を栽培するなど、精力的な活動を展開している。

もともとサツマイモは少量作っていたそう。粘土質の土壌で採れた芋は、「肌感覚として甘くておいしかった」。可能性を感じ、今では1ヘクタールにまで拡大。偶然、城下町のど真ん中に物件を見つけたことから、念願の店舗経営をかなえた。

蜜たっぷりの焼き芋

「農業は食べ物を生み出すという、なかなかできない仕事でとても面白い。直接、お客さまが食べている姿は見る機会が少なかったので、お店を持ちたかった。レストランも経営するドイツの農家を見て、『農家ってかっこいい』と思っていたので」と大坂さん。「暑いときでも寒いときでも、どんなタイミングでも味わってもらえるよう、メニューをそろえていく。丹波篠山は観光客がどんどん増えている。さらに楽しんでもらう新しいジャンルとして、焼き芋やピクルスを食べてもらえたら」と話している。

営業時間は午前10時―午後6時。月曜定休。現在、プレオープン中。

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