兵庫県丹波市春日町上三井庄の細見秀夫さん(85)は、60年ほど前から自宅で松の木の1本の枝を伸ばし続けている。現在、長さは約15メートル。家の離れの前の幹(高さ2メートル、直径30センチほど)から、高さ4メートルほどの納屋の屋根に向かってニョキニョキと伸びており、まるで、天に向かって昇る龍のように見える。
細見さんが20代前半の頃、母・まさこさんから、自宅近くの山では貴重なクロマツが生えていることを聞き、自宅へ移植。「きれいになるかな」と遊び心で伸ばし始めた。
せん定に精を出しながら、枝が真っ直ぐ伸びるよう、木の杭や石柱を立て、その上に枝が乗るようにしたり、針金を巻き付けて固定したりして工夫。「どこまで伸びるかなと気になって伸ばしていたら面白くなって。気付けば、家の塀の代わりになるぐらいの大きさまで伸びていた」と笑う。
松と共に成長してきた細見さん。これ以上伸びると電線に達してしまうため、枝の先端は切るようにしている。幹の根元は腐りかけているといい、「寿命が近いのかも。命が尽きるまで見守り続けたい」と木を見つめた。