兵庫県丹波篠山市藤坂(47戸)の春日神社で、豊作を祈願する伝統行事「御田植祭」が営まれた。禰宜(ねぎ)と呼ばれる氏子の当番が、面を着けて牛や百姓に扮し、田起こし、代かき、田植えまでの一連の所作を表現した。
禰宜数人が約4メートル四方の舞堂に上がり、神職役が、「奥の田んぼ 口の田んぼ 尺の穂垂れに 寸の米 ところ繁盛 殿よかれ」の祭詞を繰り返し唱えた。祭詞に合わせるようにして、田んぼに見立てた舞堂内を、木彫りの牛の面を着けた禰宜が前かがみになってゆっくりと歩き、その後ろを木製の鋤や鍬を手にした男女の百姓の面を着けた禰宜が続き、時計回りにしばらく周回した。
稲の苗に見立てた新緑のカツラの枝を束にした24株を奉納。同集落の山中に生える県指定天然記念物の「大カツラ」を株分けした境内のカツラの枝を使用しており、生命力が強く、豊作の象徴である大カツラにあやかるためとされている。
いつから始まったのかは不明。氏子が60歳になると、69歳までの10年間、禰宜を務めるのが習わし。氏子らは、豊作や集落の繁栄、無病息災を願った。
禰宜長を務めた中馬義治さん(66)は、「村の人口が減少していく中で、さまざまな村行事の維持が困難になってきた。細々とでも、簡略化しても良いので、継続できる形に変化させていきながら、後世に伝えていくことが大切」と話していた。