エベレスト「2つ分」 類を見ない山岳レース17人完走 一部短縮もより過酷に

2023.06.10
地域

2晩眠らず走り続け「100マイル」の部で完走し、8位入賞を果たした足立伸一さん=2023年6月4日午前6時1分、兵庫県丹波市柏原町柏原で

累積獲得標高がエベレスト2つ分という世界でも類を見ない過酷な山岳レース「TAMBA100アドベンチャートレイル」(同実行委員会主催)が、兵庫県丹波市の丹波の森公苑を発着点とするコースであった。大雨警報発令で、25キロ短縮の143キロ(約89マイル)となった「100マイル部門」(制限時間48時間)は、出走62人中、完走17人。完走率27%。地元関係では、同市青垣町出身の足立伸一さん(47)=大阪市=が38時間52分21秒で8位入賞。2021年の前回大会3位だった板垣渚さん=滋賀県=が29時間59分12秒で初優勝を飾った。100キロの部、30キロの部も行われた。記録は速報値。

警報が出た影響で、スタートが2日午前7時から午後3時に変更。コースを短縮する一方、千ケ峰三谷登山口(兵庫県多可町、35キロ地点)の関門通過時刻は午後9時45分で変わらず、スタートから猛ダッシュするスピードレースに。関門突破はわずか19人。狭き門をくぐり抜けた17人が完走した。女性は全員脱落した。

TAMBA100アドベンチャートレイルの「100マイル部門」の標高図

足立さんは2日午後9時32分に16位で同関門を通過。同登山口から、播州峠(多可町、丹波市青垣町境)間の16・5キロで日をまたいだ。篠ケ峰(多可町、同市氷上町境)経由で、甲賀山エイド(同市氷上町成松、72キロ地点、3日午前9時5分通過)で11位。安全山、岩屋山経由でたどり着いた「ごりんかん」(同市青垣町東芦田、109キロ地点、3日午後8時3分通過)で9位。ごりんかんから五台山(同市氷上町、市島町境)に登り、天王坂(同市春日町天王)へ下る途中、2度目の午前零時を迎えた。

水分れ公園(同市氷上町石生、131・6キロ地点、4日午前3時35分通過)とゴールの丹波の森公苑の間で1人を振り切り、2晩眠らず走り続け、午前5時52分にゴールテープを切った。水分れ公園から向山、譲葉山を経てゴールへ向かう11キロを、誰よりも速い2時間17分で駆け抜けた。

「練習で幻聴が聞こえるくらい追い込むので、全然きつくなかった。ごりんかんまでは足を残そうとセーブして、後半とばし始めた。水分れ公園で眠気に襲われ、最後は全速力で走った。滅多にこけない自分が3日間で10回ほど転んだ」と、淡々とレースを振り返った。

地元の山を走ることについて「山を見る目が変わる。単に『木が生えているなあ』ではなく、稜線を見て『あのこぶが大変だった』と一生思い出せる。全然違う」と意義を語る。

自営業で、大阪市と行き来しながら実家の田畑で農業をしている。37、38歳ごろからマラソンを始め、自己記録は丹波篠山ABCマラソンで出した2時間34分。秋からのシーズンで、2時間半切りを目指している。夏場はマラソン大会がなく、息抜きにトレランをしている。愛宕山(京都市)をホームマウンテンとする「TEAM SKY KYOTO」所属。

兵庫県立柏原高校ワンダーフォーゲル部OBで、高校生時分から山好き。高校時代に山岳マラソンをやりたかったが、部で取り組むことはなかった。部で京都府宮津市まで夜間歩行をした時も速く、長距離の持久系スポーツが向いている自覚はあった。「フルマラソンでは距離が短く、より長距離の方が適性がある」という。

前回大会は、100マイル走る自信がなく、50キロの部に出場。大会の設営ボランティアをし、前日の設営の疲れが残ったまま走ったという。

「TEAM SKY KYOTO」の仲間の中谷亮太実行委員長(32)は、「元々、マラソンが速い。今まであまり長い距離を経験されていなかっただけで、適性がある。スピードもあり、この山に適応されたのはすごい」とたたえた。

ニュージーランド出身のディーン・スチュアート選手は42時間35分59秒の10位。

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