兵庫県丹波篠山市が開設している「丹波篠山暮らし案内所」(黒岡、市民センター内)の2022年度の移住実績がまとまった。相談件数、移住者数とも過去最多となった21年度からわずかに減少しつつも相談924件、移住68世帯185人と堅調に推移。都市部の人が地方での暮らしを求める流れが続いていることがうかがえる。また、インバウンド(外国人観光客)などを対象にした起業目的の移住者もあり、地方都市が「ビジネスの場」として選ばれるという、新しい動きも顕著になりつつある。
コロナ禍以降、相談、移住実績ともに急増しており、19年度は相談336件、移住29世帯70人だったのが、20年度は相談735件、移住50世帯124人に。21年度は相談947件、移住77世帯206人だった。
22年度は前年度比で相談で23件、移住で9世帯21人減ったものの、コロナ禍前と比べると、高い数字を維持している。
2009年の案内所開設以降、相談件数の業務の記録が始まった12年は相談495件、移住8世帯20人で、22年度は相談で約1・8倍、移住で約9倍となった。
相談の年代別では50代が1位(113件)。40代(97人)、60代(63人)、30代(55人)と続く。
移住目的の1位は、以前からある「セカンドライフ」(143件)で、2位は「子育て」(78件)、3位は「就農以外の起業」(73件)。カフェなどのほか、外国人向けの宿泊施設の開業を予定する人もあり、同案内所は、「外国人観光客は都市部から地方に目を向けだしており、2025年には大阪関西万博もある。インバウンドを対象にした事業で起業しようとするなど、ひと昔前では考えられないような移住理由がある」とする。
また、コロナ禍の収束とともに「コロナを理由に」が鳴りを潜め、真剣に、また純粋に地方への移住を考える人が増えている。案内所は、「1年後、3年後を見据えたり、自治会の年会費や集落の草刈り作業などについて尋ねられたりと、下調べも入念で、とても計画的」とする。市街地よりも周辺部の希望が多く、農村や田舎らしさに魅力を感じていることがうかがえるという。
一方、課題は、増加する移住希望者に対して紹介できる物件が足りていないこと。市の空き家バンクには約100軒が登録されているが、900件を超える相談に対応できておらず、移住を決めた人でも選択肢は少ない。
「どうしても丹波篠山に移住したいけれど、物件がなくて保留になっている人や、待っているうちに他市で物件が見つかり、そちらに移住されたケースもある」と言い、「少しずつ登録相談が増え始めた。物件をお持ちの方は、探している人が多いうちにぜひ登録を」と呼びかける。
市は地域の定住促進推進員から約800軒の空き家があると報告を受けており、今年度、空き家バンクへの登録増を目指して、片付けなどの準備費用として所有者に5万円を交付する制度を新設する予定。