兵庫県丹波篠山市内でイネ科の多年草、真菰(マコモ)を無農薬で栽培し、加工や流通に取り組む6次産業として収益化を目指す株式会社「真菰JAPAN」が、商品化第1弾として、栄養素が豊富な葉を天日干しにした真菰茶などを開発し、販売を始めた。代表の藤井哲さん(66)らは、「地域の皆さんにマコモの存在を知ってもらい、丹波篠山の新たな特産品になれば」と意欲を燃やしている。
真菰茶は、天日干しした葉を適度な大きさにカットしたもので、やかんや急須で煮だして飲む。色、味ともに普通の茶のようで、キャッチフレーズは、「健康をお土産に」。
ビャクダンなどと共にマコモを練りこんだ香も開発。寝る前などに寝室でたくと、安眠やリラックス効果があるという。
全国の水辺で群生し、高さ1―2メートルほどに成長する。食物繊維が豊富で老廃物の排出や腸内環境を整えるほか、ビタミン、ミネラルなど現代人に不足しがちな栄養が詰まっており、美肌、抗酸化作用があるとされる。
また、栽培することで土や水を浄化するとされる。秋に収穫でき、茎が肥大化したものは「マコモダケ」と呼ばれ、タケノコに似た食感が楽しめる食材になる。
神社の御神体や注連縄に使われたり、万葉集に詠まれたりと、古来、神聖かつ身近な植物とされてきた。
2年ほど前、最初に城北地区で20アールを栽培し、新たに福住地区でも2ヘクタールを栽培し、面積を拡大。藤井さんは、「すごい生命力で、基本的に苗を植えるだけで成長し、6月以降は冬まで毎月のように収穫できる。ただ収穫は手作業なので大変」と苦笑する。
同社発足のきっかけは、海外で働きながら学ぶ「ワーキングホリデー」で知り合った、日本の良い物を世界に発信していこうという思いを持った若者たちが、マコモの存在を多くの人に伝えたいと計画。思いは熱く、それぞれ別の仕事をしながら農業に取り組む「半農半X」で栽培できる土地を探す中、丹波篠山にたどり着き、知人を介して藤井さんとつながった。
農業歴25年の藤井さん。はじめは土地を紹介したり、「やっとこか」と栽培を手伝ったりしていたそう。その後、6次産業化して商品を流通させるには会社が必要だとなった際、地元住民で農業に精通していることから代表に就くことになった。
とはいえ、「半ば勢いで」の起業。壁にぶち当たることもあったが、デザイナーや営業、商品企画など、ほかのメンバーがそれぞれの本業を生かして支えている。
過去に大手飲料メーカーのマーケティング担当を務め、現在は独立し、コンサルタントなどを行っている松島淳さん(35)も仲間に引き入れ、活動を本格スタートする体制を整えた。
藤井さんは、「栽培も簡単で、農薬も使わないので環境に優しい。初期投資もほとんどいらないので取り組みやすい。収益化さえできれば、新規就農者の増加や耕作放棄地の解消にもつながる」と期待。松島さんは、「黒大豆などの『丹波篠山ブランド』には、おいしくて品質の良い特産物というイメージがある。マコモにもこのイメージを活用したい」と言い、「とにかく楽しいので収穫体験なども行い、関係人口や交流人口の増加にもつなげていけたら」と笑顔で話している。
真菰茶は5グラム入り500円(1リットル―1・5リットル分)、25グラム入り1500円。香は700円。現在、販路を構築中。
購入希望者は松島さん(080・5327・5613、メールa.matushima@makomo-japan.com)。