阪神甲子園球場で開かれている「全国高校野球選手権記念大会」。11日に初戦を迎える立正大淞南高校(島根)には、兵庫県丹波市立市島中学校出身の木下仁さん(3年)が所属する。木下さんは優勝した県大会の全5試合で、5番ライトでスタメン出場し、主軸として活躍。11年ぶり3回目の出場の原動力となった。「甲子園はずっと目指していたところ。うれしい」と喜び、「チャンスで打って、勝利に貢献したい」と静かに闘志を燃やす。
右投げ右打ちで、169センチ、77キロ。一発が期待でき、パンチ力のある打撃が持ち味だ。
県大会準々決勝の強豪・開星戦では、3―3の同点の五回表にレフト前タイムリーを放って決勝点を挙げ、6―3の勝利の立役者になった。準決勝の松江西戦(14―4)では3打数3安打2打点の大暴れ。決勝の益田東戦(3―0)では二回表にツーベースヒットを放ってチャンスメイクし、先制点をお膳立てした。
地元の三輪少年野球クラブを経て、丹波市の中学硬式野球チーム「氷上ボーイズ」に入団。主力の外野手として活躍した。3年時には砲丸投げでも全国大会に出場し、高い身体能力の片りんを見せた。
甲子園に出場できる高校への進学を考える中、チームの指導者から立正大淞南を勧められた。体験練習で緊張感ある雰囲気に魅力を感じた。
厳しい練習、寮生活に身を投じたが、思うように結果は出なかった。昨秋には背番号7を背負ったが、主戦場は三塁ランナーコーチ。以降、レギュラー奪取に向け、「振る力を付けよう」と、ベンチプレスやスクワットなどの筋力トレーニングに注力した。
その成果は5月末の松江地区大会で出た。特に、出場機会が得られていない3年生に多くチャンスが与えられる大会。「ここで結果を出さないとメンバー入りは難しい」と危機感を持って臨んだ。計4試合で打率は5割を超え、ホームランも1本放ち、アピールに成功。最後の夏直前にレギュラーの座をつかんだ。
「遠い所までずっと試合を見に来てくれている両親(大介さん、由美子さん)に活躍する姿を見せたい」と誓う。
氷上ボーイズの永井豊代表(69)は「一度やり始めると一生懸命に『ガーッ』とできる。イノシシみたいにまっすぐな子」と評す。甲子園には氷上ボーイズの選手たちと応援に行く予定といい、「ボーイズの選手にも、『夢はかなえられる』ことを見せてほしい。全力で楽しんで」とエールを送る。
同校には、同じく市島中、氷上ボーイズ出身の西山英汰さん(2年)も所属している。