終戦の時期に合わせ、兵庫県丹波市の春日歴史民俗資料館で夏季企画展「モノから見える生活の中の『戦争』」が開かれている。昨年、同市に寄贈された、同市春日町黒井出身の俳人、片山桃史(本名・隆雄)の出征旗3本が初披露されているほか、尋常小学校の国語や修身の教科書、貨幣、千人針、軍刀など計33点を展示。身近な郷土資料の「モノ」を通じて、戦時下の状況や背景を伝えている。
桃史の出征旗は、昭和12年(1937)の出征前、勤めていた三和銀行(現・三菱UFJ銀行)天満橋支店一同から贈られたもの。手書きの1本は、縦270センチ、横65センチと大きく、「祝 片山隆雄君出征」と書かれている。桃史は、同15年(1940)に中国戦線から帰還するも、翌年に再び出征し、同19年(1944)に東部ニューギニアで、31歳で亡くなったとされる。
戦時下の学校にあったものもテーマの1つ。明治34年(1901)の国語読本には「ケフハ、いくさのまねヲシテアソビマセウ。あなたがたハ、てっぽーヲカツイデ、へいたいニオナリナサイ。わたくしハ、けんヲモッテ、たいしょーニナリマセウ。すすめやすすめや、いざすすめ。あしなみそろへて、いざすすめ。」とあり、明治時代からの軍国主義教育がうかがえる。また、大正8年(1919)の修身書の目次は「皇后陛下」から始まり、「ちゆうくんあいこく」「よい日本人」などが並んでいる。
同市の柏原高等女学校で昭和初期に撮られたとみられる「奉安殿」の写真も展示。明治23年(1890)に発布された「教育勅語」と天皇の写真「御真影」を収めた建物で、市教育委員会社会教育・文化財課の玉出隼人学芸員によると、「市内では場所がはっきりと分かる写真は珍しい」という。
このほか、金属が供出されたため、徐々に質が悪くなっていった貨幣も16点展示している。
玉出さんは、「世界では今まさに戦争が起きており、人ごとではない。実物を1つの足掛かりに、戦争と向き合うことを考えてもらえれば」と話している。
戦時下の館蔵品を一堂に展示するのは初めてという。10月8日まで。土、日曜日と火曜日の午前中のみ常時開館。