小学校の自然学校などで利用されている社会教育施設「丹波少年自然の家」(兵庫県丹波市青垣町西芦田)を運営する、丹波少年自然の家事務組合(管理者=林時彦・丹波市長)は4日、同施設で組合議会を開き、今年度末の組合解散に伴い、新年度から同施設を丹波市に譲渡するなどとする首長間の協議結果を報告した。建物除却費の負担を巡る法的リスクを回避するため組合から同市に移管し、新しい運営者を募るなど同市が今後の活用を考える予定。構成市町の9月議会で関連議案の議決を経て本決まりになる。
組合を離脱した同県尼崎市を含む9市1町の首長の話し合いで、丹波市に譲渡すること、関係市町が今後も同施設を存続、活用するための費用(修繕費など)を負担し、3・1億円の基金を、施設を承継する丹波市に帰属させることなどが合意事項。議員(構成市町の首長、議長)から異論は出なかった。
同施設は地元から土地を借りており(年間賃料400万円)、土地を返す場合は「現況のまま引き渡す」と記載がある、土地貸借契約書の文言解釈を巡り、首長間の考えが対立した。
建物の除却にかかる4億円とも言われる費用を、組合が負担する必要はなく、市民から不適正な支出に当たると訴訟を提起される法的リスクがあると、一部の首長が主張。一方、長年、土地を借りながら、地元に除却の責任を負わすのは道義的に問題で、行政の責任で行うのが社会的正義だとする首長とで主張が対立し、膠着状態が続いていた。
この問題は、「地権者と丹波市との間で、土地の貸借について新たに契約する」ことで、首長間の合意を見た。これにより、組合と地権者との土地貸借契約はなくなり、施設の解体費用負担に関し組合に法的リスクが生じるのを回避した。丹波市が今後、地元と結ぶ貸借契約と組合は無関係になる。貸借契約は1978年に同施設を建設するに当たり交わしたもの。
同組合職員の処遇は、正規職員8人のうち2人は退職、5人は本人の希望する構成自治体職員となり、1人は構成自治体の会計年度任用職員に採用される方向。
同組合解散に向けた協議に関する会議で座長を務めた、越田謙治郎・川西市長が報告した。越田市長は「いいところに落ち着いた。林市長と丹波市、市議会に感謝する。組合運営から形は変わるが、私も少年野球の合宿で使わせてもらったこの施設が、これからも活用されることが、私たちの願い」とコメントした。
林市長は「一段落ついた気持ちはある。子どもの声が響く施設に、との地元要望に応えるべく、すぐにでも今後に向けて動きたい思いはあるが、構成市長の議会で議案が可決されるのを見届けてからだ」と慎重姿勢。「市の直営にはしない。市が運営事業者を探すことになるだろう」と見通しを語った。
組合は、県内の阪神丹波の9市1町で構成していたが、尼崎市が2021年に組合脱退を表明。8市1町で組合継続を検討したが、尼崎市が抜けた後の費用負担の在り方を巡り、首長間で意見がまとまらず、今年度末で解散が決まった。6月末で、利用受け入れは停止している。同施設は敷地面積約15万平方メートル。鉄筋コンクリート造3階建ての本館(宿泊定員270人)、センターロッジ(同86人)、ログキャビン(同88人)、体育館、共同炊事場、3つのグラウンド、キャンプ場などを備える。土地の所有者は、西芦田他2ケ区林野管理組合。