筆ペンとパステルで人なつっこい地蔵の絵と日々の思いを短文でつづる「筆文字」と、2頭身にデフォルメされた木彫りの地蔵を作る2人組制作ユニット「公花の筆文字屋」が、兵庫県丹波市柏原町下町3471-1にギャラリーショップをオープンした。名庭園として知られる「一青堂」内の建物に店がある。「作品はもちろん、この素晴らしい場所に足を運んでもらえれば」と来店を呼びかけている。
筆文字は足立公香さん(48)、木彫は井上泰彦さん(52)。元和太鼓サークルの仲間。2人の作品に共感し、励まされ、元気づけられると、交流サイト(SNS)で多くのファンを持つ。これまでイベント出店を続けてきたが、イベントでは充分客と話せず、スペースが限られ、大きな作品は並べられなかった。何よりゆっくりしてほしいと、常設の店を構えることにした。古民家で、と探していたところ、たまたま見つけた物件が一青堂だった。
一青堂は、柏原生まれで、神戸で弁護士を開業した後、郷里に戻って柏原町政に関わり、40歳過ぎで隠居した明治の文人、片山八頂(1859―1949)の庵跡。50年もの歳月をかけて造った庭園が今も残っている。木の塀で囲まれており、外からはうかがうことができない、知る人ぞ知る文化遺産。
丹波・篠山酒造組合から京都市の会社に所有者が代わり、亀岡市の不動産会社が管理している。二人が店舗に借りたのは、酒造組合が使っていた、庵の離れ部分。
足立さんが1枚1枚異なる言葉をしたためた書や壁掛けのほか、井上さんが旋盤で削り、足立さんが顔を描く置物や御守りのヒノキのお地蔵さんも、1体1体微妙に違う。作品のほとんどが一点ものだ。
足立さんは「偶然の出合いで素晴らしい場所を借りることができた。今後はワークショップなど、ここに人を呼ぶ企画を考えたい」と言い、井上さんは「住宅地のど真ん中にこんな空間があるなんて。僕らのことも、一青堂のことも知ってもらえたら」と話している。
共に会社員のため、毎月21日(午前10時―午後4時)に開けるほかは、不定期。「公花の筆文字屋」で検索を。