兵庫県丹波篠山市今田町黒石に、ジビエ料理を提供し、コンテナを使った2棟の休憩所を備えた複合施設「メタセコイアの木」がオープンした。施設内には約20体の動物のオブジェが点在。周りに人家のない”秘境”で「動物たち」と過ごす非日常空間が売り。施設を経営する株式会社ヨシミツ(本社・大阪府松原市)は、アニマルオブジェの展示を生かしたテナントや飲食店の経営実績がある。宮田守社長(49)は、「周りの自然を保全しながら、地域の活性化に貢献したい」と意気込んでいる。
場所は、そば店「ねじき蕎麦時夢館(タイムハウス)」の近く。県道に体長3メートルほどの恐竜のオブジェと共に時夢館の行き先とを兼ねた看板が立つ。看板から施設へ約600メートル。道は車1台分の幅で、先は行き止まり。イノシシやサルのオブジェが来場客を迎える。
施設には、鴨料理を中心にしたジビエ料理を出すレストラン棟、その横には更衣室と大きなバスタブ、サウナ室、水風呂用のバスタブを備えるログハウス、コンテナを改装した休憩所がある。休憩所の開放感ある窓からは、そばを流れる小川や、ライトアップされた景色を楽しめる。施設中央には、元から生えていた高さ10メートル以上のメタセコイアとバーベキュースペースがある。オブジェは、動物のほか、映画キャラクターがハンモックに揺られている。
造園業や建築業を営み、一風変わった複合施設を手がけた同社は、兵庫県三田市で大型のアニマルオブジェが展示されているテナント「エムクラスガーデン」や、ピンクのパトカーが国道沿いに展示されているカフェレストラン「Shrine Paddy Field」なども経営している。
アニマルオブジェの着想は宮田社長が外構工事に従事していた際、「個人宅の庭を面白くしたい」と、玄関までのアプローチの敷石に施主へのサプライズとして動物の模様を仕掛けた。施主の評判は上々で、「調子に乗って、今度は立体的なものを」と、御影石でオブジェを作るように。しかし、納得がいかず、「何かもっと驚くようなものを」と探し求め、アメリカで販売されているアニマルオブジェに行き着いた。早速、現地に行き、日本での販売代理店契約を結んだ。
長さ約12メートルのコンテナ3台分のオブジェを輸入したが、欠けたり、割れたり、塗装がはがれていたりと「無茶苦茶だった」。本社で展示していたが売れず、在庫を抱えた。しかし、独学で修理、塗装方法を学んで商品化し、営業を開始。小型のオブジェが個人宅で売れ始め、飲食店からの購入、レンタルも増えた。コピー商品も出回ったが、劣化しにくい特殊な塗装方法や、演出、施工も含めた販売などが奏功し、テーマパークや水族館などからも注文が来るようになった。
10年ほど前、三田市のテナントでオブジェの展示販売を開始。「商業地から離れたこんな場所で集客はできない」と不動産業者には言われたが、大型のアニマルオブジェや、後部に女性がしがみついている送迎用マイクロバスなど、インスタ映えスポットとして、ネットで自然と話題になり、さらにメディアにも取り上げられ、テナントに入る店の集客増にもつながった。
黒石の複合施設は、三田市のテナント入居者を通じ、時夢館代表の藤本定一さん(71)から高齢化する地域の活性化の相談を受けたのがきっかけ。「人が集まらないと思われる所で集客する。人がやらないことに挑戦する」がモットーという宮田社長。廃墟と化したログハウスの倉庫付古民家を、本業を生かして造成、改装した。県道からの入り口には恐竜のオブジェを置いたことから、早速、バイクや車で通りがかった人がネットで拡散。「広告しなくても店を知ってもらえる」と手応えを感じている。
レストランは一日1組で完全予約制(1週間前まで)。最少4人からで定員は12人。鴨料理(1人1万2000円)などが味わえるほか、サウナや風呂も利用できる。1グループで、バーベキュー設備やコンテナの休憩所も利用できる施設貸しも行っている。
宮田社長は「地野菜や惣菜などを地域の方からご提供いただき、集客力を上げて、黒石の活性化に一役買いたい」、地元の前自治会長で現顧問でもある藤本さんは「周りは一時期に建てられたセカンドハウスの空き家が多く、物騒だった。周りの自然を生かして、こんなに明るい雰囲気になりありがたい。地域と一緒にやっていこうという方に来ていただき良かった」と話していた。