認知症の予防、早期発見につなげようと、兵庫県丹波市薬剤師会は、神戸大学院教授らと、薬局で脳年齢を測るテストを始めた。テストは、デジタルトランプゲーム。タブレットやスマートフォンでプレイする。あわせてアンケートに答え、世界保健機関(WHO)が脳の健康度を維持・向上するために推奨する生活習慣の改善に取り組んでもらうことを促す。テストを用い、薬局が健康助言をすることが行動変容にもたらす影響を研究する。
同市との共同事業で、認知症予防プログラムの頭と体の運動教室「コグニケア」の研究に取り組む同大学院保健学研究科・医学部保健学科認知症予防推進センター長の古和久朋教授が研究責任者。市薬剤師会の36薬局中26薬局が参加している。
テストは無料。対象は60―85歳で、認知症の診断を受けている人、要介護1以上の人、日本語で会話が困難な人は対象外。本人の同意を得て実施する。
テストは、大手製薬会社「エーザイ」が開発した脳の健康度の自己チェックアプリ「のうKNOW」を使う。ゲームを通し、脳の反応速度、注意力、視覚学習、記憶力をチェック。ゲームは15分程度で終わり、即座に集中力と記憶力の得点が表示され、それぞれA―Cで評価される。評価は医師による診断ではないが、2項目ともC判定の場合は、本人が同意すれば、古和教授の名前で、同市医師会の認知症サポート医に照会する仕組みをつくっている。
ゲーム後にアンケートを実施し、WHOが勧める脳の健康度維持・向上推奨12項目=表=に取り組む意向の有無や、現在服用している薬について気になっていること、物忘れが気になったときにどう対応するか、などを聞く。
薬局はアンケートの結果をもとに、例えば「運動をする」と答えた人が、次に来局したときに「その後、運動は順調ですか」などと声をかけ、脳の健康維持をサポートし、「バランスの取れた食事もしてみませんか」と声かけをするなど継続的に関わっていく。
ゲームと、アンケートの説明、実施を含め、所要時間は全体で1時間。石塚正則副会長(67)は、「興味がある人は試して」と言い、「薬剤師は来局者に、遠慮なく話をしてほしいし、ケアできるものはしたいと考えている。処方箋に基づいて薬を出すだけでなく、未病の世界に持っていくのが一番の仕事。これを機に、市薬剤師会が皆さんの健康をバックアップすることを知ってもらいたい。WHOの12項目の中から、どれなら続けられるのか、一緒に考えたい」と話している。
薬局は病院、診療所より、患者が素の自分を出して相談しやすく、継続的な関わりも持ちやすいことから、薬局を用いた研究としたという。
同市薬剤師会のほか、神戸市の薬局なども共同研究者。世界経済フォーラム年金(ダボス会議2020)の包括的グローバル規模のアクションの一つ。日本、アメリカ、カナダ、ブラジル、イギリスで、同内容でデータ集めが始まっており、24カ国で実施し、解析する。