一人の少年が原点に
丹波市の児童養護施設「睦の家」で、家庭支援専門相談員を務める。「子どもたちの最善の利益」を常に考えながら、親子関係の再構築を支援していく立場。子どもたちや保護者らと密接に関わる中で、「子どもたちが自信を付けて、成長していく姿を見ると元気やパワーをもらうし、親御さん自身の考え方が変わったと分かった時、大人になっても人は変わることができることに強く心を動かされる」。
高校時代、進みたい方向が分からなかった。昼間は旅行会社で働きながら、夜は専門学校に通っていた時、阪神淡路大震災が発生。ニュースを見ながら、「学びたかったのは福祉」と気付いたが、その時は、思いはかなわなかった。
結婚し、コンビニの経営を始めると、開店したばかりの店に、夜中にバイクを乗り回す少年がたびたび現れた。「注意してけんかになりかかったこともあるが、徐々に心を開いて、笑顔を見せてくれるようになった」。ところが、その少年が突然、亡くなったと聞き、大きなショックを受ける。「何か自分にできることはなかったか」という思いが募った。
その後、子どもを育てながら30歳で通信制の大学に入学。高齢者施設で働く傍ら、高校の福祉教員免許を取得した。丹波市の家庭児童相談員、有馬高校での臨時教員を経て、睦の家へ。社会福祉士、精神保健福祉士の資格も取得した。「あのときの無力感が根本にある」と言い、コンビニで出会った少年への思いを原点に学び続けている。
「まだまだ未熟だと思うことがたくさん。自分自身も高めていきつつ、子どもたちの成長のきっかけを作る一人になれたら」。48歳。