子育て世帯を支援している兵庫県丹波篠山市のNPO法人「スマイルポケット」(10人)が、生活に困窮している子育て世帯を対象に月1回、無料で食料品を届けながら見守る事業「ささっこスマイル便」をスタートさせた。食料品を届けながら、困り事や悩み事にも耳を傾け、その解消や軽減につなげる。中村伸一郎代表理事(58)は、「子育ては1人で、家族だけで頑張らなくていい。誰かに頼ってもいい。活動を通してつながった子育て世帯の皆さんの困り事や悩みを伺い、笑顔になれる話し相手として、居場所として、寄り添っていきたい」と話している。
スマイル便は、市内在住で18歳以下の子どもがいる家庭が対象。申し込みはスマートフォンからできる。毎月第2金曜日(基本)に、自宅まで毎回決まったスタッフが届ける。
食材などは同法人が補助金で購入するほか、生活協同組合コープこうべのフードドライブ、JA丹波ささやま味土里館から地元野菜などの提供や、他のNPO法人などからの支援を受けている。
初の発送日となった18日は、同法人、コープこうべ、市社会福祉協議会をはじめ、社会貢献活動を推進しているネッツテラス篠山、第一生命のスタッフや社員、職員ら約25人が、コープこうべ協同購入センター丹波(吹新)に集まり、申し込みのあった25世帯に発送するため、食料品の仕分け作業に励んだ。米やみそ、夏野菜、パスタや切り餅をはじめ、茶などのペットボトル製品、クッキーなどの菓子類、缶詰、ピザなどの冷凍食品などを、仕分け用の買い物籠にぎっしりと詰め込み、同法人スタッフが申込者の自宅へ配達した。
同法人の前身は、2020年に設立した任意団体「丹波篠山の子どもの食と健康を考える会」。「つながる」「よりそう」「つなげる」をテーマに、子どもの居場所づくりや、子育て世帯へ弁当を届ける取り組みをはじめ、1人親世帯を対象に農作物収穫を通した交流会を実施してきた。より安定的な支援活動を目指し、昨年12月に同法人を設立し、今年4月から事業を開始した。スマイル便のほか、「―考える会」で実施してきた取り組みも継続する。
同法人の活動の背景に、子どもの貧困があった。厚生労働省の貧困率状況調査で、子どもの相対的貧困率は00年以降13―16%で推移しており、7人に1人の子どもが相対的貧困の状況で生活している。また、新型コロナ禍の影響を受け、困窮世帯は増加しているという。
「―考える会」時代の20年度に、市内の子育て世帯を対象に行ったアンケート(回答数239世帯)でも、全体の11%が「コロナ前から、他の生活費を優先し、食費を削ることがある」、10%が「コロナの影響で食費を削った」と回答した。
また、「行政や社会福祉協議会に相談できることを知らない」という答えが半数に及んだことに、同法人は「公的な支援制度を知らず、本来受けられるはずの支援制度につながっていない可能性がある」とし、「知っていたとしても、1人親や共働きで多くの保護者が働いている状況では、平日の日中しか開いてない窓口に相談に行くことも難しく、制度につながらない要因の一つとなっている」と問題提起している。
同法人は、食料品のほか、生活用品や現金の寄付も募っている。詳細はホームページで。