「独作家の植物への視点」研究 故郷の幼少期が礎 東大院博士課程の山中さん

2023.11.01
地域注目

ベルリンに旅立つ前に一時帰郷した山中慎太郎さん=兵庫県丹波市氷上町石生で

東京大学大学院でドイツの文学者がどういう興味を持って植物を自身の作品に取り入れたかを研究している山中慎太郎さん(27)=兵庫県丹波市青垣町東芦田出身=が、日本学術振興会の海外派遣奨学金を得て、先月から1年間、国立ベルリン自由大学に留学している。修士論文のテーマは「ゲーテと植物の詩学」。留学に際し、「子ども時代に青垣で植物や生き物を捕まえて遊んだこと、俳人細見綾子の地元の芦田小学校で俳句を学び、日本の短詩、古典文学に触れた経験が研究の礎」と故郷への思いを語った。

青垣中、柏原高校を経て早稲田大学文学部ドイツ文学コースに入学。東大大学院で文学修士。現在、同大学院人文社会系研究科ドイツ文学研究室博士課程。

もともと文学への興味があり、幼少の頃から母の佐恵子さんにピアノを学び、音楽を通じドイツ文化への関心が高まった。ドイツの音楽と文学の関わりを考えたいと進学。在学中に宗教史学者・文化人類学者の中沢新一が南方熊楠(植物学者)について書いた著書を読み、人文学者が植物、自然をどう見ているのかに興味を持ち、ドイツ文学と自然との関係を考えようと、研究生活を始めた。

18世紀に生きたゲーテは詩人、文豪として知られているが、自然科学や植物の研究者でもあった。「ゲーテの仕事を継ぐように、詩人が自然科学や植物を詩作に取り入れている。彼らの、書くことと自然を見ることの平行した関係が、非常に面白い」と夢中になっている。

ゲーテやトーマス・マン(小説家)など、研究の焦点を、個人とその作品に当てるドイツ文学研究者が多い中にあって、山中さんの研究は作家を横断し、文学と自然科学を横断するもので、優れたテーマで評価されている。

NHK朝ドラ「らんまん」のモデル牧野富太郎博士が勤務していた植物学研究室で、牧野の標本を撮影するアルバイトをするなど植物の研究者の近くにもいる。

「われわれにとって外国語文学のドイツ文学を、彼らは国文学として研究している。自分の研究がどれだけ価値のある仕事になるのかを確かめ、いろんな示唆を頂きたい。生活面でも、他国の学生との交流は刺激的なものになる」と期待する。

帰国後2年以内に論文を仕上げて文学博士号を取り、研究職に就く将来設計を描いている。

日本学術振興会は、日本学術会議と深い関わりがある文部科学省所管の独立行政法人。学術研究の助成、研究者の養成のための資金支援などを行っている。

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