兵庫県丹波篠山市立古市小学校PTAが人権学習の一環でこのほど、同校で、障がい者で絵本作家の前川千恵子さんを講師に講演会を開いた。前川さんは、7年前から、自伝や障がいをテーマにした絵本を制作しており、障がい者理解の一助になればと精力的に創作活動に取り組んでいる。オープンスクールの日でもあったため、講演会には全校児童(94人)のほか、地域住民も参加。前川さんは、自伝の本「雨あがりの人生」や手がけた絵本を紹介しながら、障がいが原因で幼い頃から受けてきた数々のいじめや差別を赤裸々に告白。「絵本に自分のことをあからさまに描くのは抵抗があったが、今、苦しんでいる誰かの支えになるのなら、伝えるべきという使命感のようなものに突き動かされた」などと話した。
前川さんは冒頭、「生まれつき小児まひで全身に障がいがあり、無意識に体に余計な力が急に入ってしまうので、水の入ったコップを持ち運ぶことができない。この体は、思っていることと別の動きをするので手に負えない」などと説明した。
子どもの頃、同級生から「病気(障がい)がうつるからあっちヘ行け」「変なかっこうをして、お前なんか死んだらいいねん」などの心ない言葉を幾度となく受け、学校ではいつも一人で声を潜めながら過ごしていたという。
中学2年の時、養護学校に転校。親元を離れての寮生活となったが、たくさんの友だちができ、自分らしさを取り戻して楽しい毎日を送った。しかし、幸せは長続きしなかった。
社会人となり、会社から帰宅途中、不自由な足で横断歩道を渡っていると、車に乗った3人組の男から「けったいな歩き方しとるで。おもろいなあ」と叫ばれた。深く傷つき、自殺も考えた。「障がいがあると分かった時点で殺してくれたらよかったのに」と両親をも恨み、長い時間泣いた。「でもここで終わりにしたら、今までいじめに耐え、生きてきたことが全部無駄になる」という感情がふいに湧き起こり、「私をいじめた人たちに負けることになる。今までのことを絶対に無駄にしてたまるものか」と、前を向くことができたときの心情を語った。
前川さんは、障がい者を見かけても「驚いたり、おびえたりするのではなく、ひと言『こんにちは』と声をかけて。それだけでうれしいから」と児童らにやさしく語りかけ、「これから先、皆さんもいろんなことでくじけそうになることがあるかもしれない。そんなときこそ悔しいという思いや、負けてたまるものか、という気持ちを持ち続けて。悲しみは長くは続かない。そう考えて一歩踏み出したら、きっと昨日より強い自分になれるはず」などと伝えていた。