兵庫県丹波市春日町の春日部地区自治協議会が今年6月から毎月1回、死後の準備をする活動「終活」のセミナーを、交流施設・春日部荘で開いている。毎回10人ほどのお年寄りが参加。終活ライフケアプランナーのほか、葬儀屋、司法書士ら専門家のアドバイスのもと、自分の情報や死後の希望などを記す「エンディングノート」の作成を進めている。ネガティブな印象もある「終活」とは思えないほど明るい雰囲気の中、誰しもにいつかは訪れる、来たるべき時に備えている。
同地区で暮らす65歳以上の高齢者は758人で、高齢化率は38・28%(8月末時点)。丹波市の35・3%を上回る。独居の人も多い。将来について悩む時間を減らすことにつながればと、セミナーを企画した。
メイン講師は、終活ライフケアプランナーで、「さくらプランニング」の柴原万里子さん(67)=春日町=。毎回、▽預貯金▽葬儀▽家族や知人▽不動産―といったテーマを設定し、複雑なテーマの場合には専門家を招く。テーマに関する必要事項を記入できる紙を参加者に配布し、学んだ内容をもとに書き進めてもらい、エンディングノートとしてファイリングしている。
このほど開いた不動産をテーマにしたセミナーでは、「塩谷不動産商事」(丹波市市島町梶原)代表取締役で、宅地建物取引士の山本篤史さん(45)を招いた。家や田畑、山林などの不動産は、後に誰のものか分からずに放置され、家族や地域に迷惑をかけるケースが多い。山本さんはまず「不動産資産の把握」を勧めた。
市役所で「土地・家屋名寄帳兼課税台帳」、法務局で「登記事項証明書」を取得すれば、所有する土地や建物の所在、面積を把握できることを紹介。所有者名義が自分ではなく、逝去した先代の親や祖父母になっている場合は自由に売却ができず、相続がスムーズにできなくなるといい、「できることから少しずつ始めて」と呼びかけた。
一人暮らしで、毎回参加しているという船川育子さん(88)=春日町多利=は「初めは何をしたら良いか分からなかったが、やるべきことが少しずつ分かってきた。家系図をまとめたことで、父や義理の母への感謝も芽生えた」と笑みを浮かべた。
同じく一人暮らしの高見史子さん(79)=同=は「家や土地のことなど、『しておかないといけないこと』が、ちょっとずつ解決している。落ち着く」と顔をほころばせた。
同協議会によると、「普段はタブーな『死』のことを話している分、何でも話せるような空気感がある」という。「葬儀ではドレスを着たい」「棺おけに花を入れてほしいから、春に死ななあかん」などと冗談も弾み、「コロナで減っていた、わいわいとできるコミュニケーションの場になっている」と話す。
柴原さんは「ノート作りを始めるのは、頭がしっかりしていて、動けるうちから。愛する子ども、地元のためにも」と意義を語り、「他の地域にも広まってほしい。相談があれば、近くの社協や私のところまで来てもらえれば」と呼びかける。