美容師の堀川直人さん(42)=兵庫県丹波篠山市東新町=が営む中華そば屋「リンダメンダ」が、同市網掛にオープンした。香川県で割烹居酒屋を営む弟の龍二さんからレシピを学び、イベント出店で好評を得た上品な和風だしの一杯を、丹波焼の器で提供する。オーナーを務める美容室「リンダリンダ」(同市東新町)の2号店として理容室を開く物件を探すうち、夢だった飲食店と両方が開店可能な物件に巡り合った。堀川さんは「(中華そば屋を)なんで始めたのか、自分でも分からない。気づいたらこうなっていた。巡り合わせ」と真顔で語る。「本業」と言う美容師と、中華そば店主の“二刀流”の忙しない毎日が始まった。
中華そば(850円)は、魚介と鶏がらでだしを取り、あっさりながら、こく深いスープが特長。中華そばのスープをベースに、牛の小腸を揚げたコラーゲン豊富な「油かす」を加えた「肉かすそば」(1100円)も絶品。「スープからチャーシューまで、全て一から作っている。無添加で、子どもからお年寄りまで食べられる優しい味」とアピールする。
「丹波篠山にはモーニングの店が少ない」と、火―金曜日の午前6―8時までの早い時間帯には「朝そば」が味わえる。昼は午前11時―午後2時。夜(午後6―10時)は土曜日のみ開け、明るい赤ちょうちんをつるし、屋外でも営業する。
器は、色合い、デザイン共に多彩な若手の作品を中心にそろえた。「丹波焼に実際に触れてもらい、良さを知ってほしい。全窯元の器をそろえるのが夢」と語る。
店内には、堀川さんが収集してきたアメリカのアンティーク雑貨が数多く並ぶ。ヒップホップやレゲエといったBGMも流し、洒落たバーのような空間が広がる。
居酒屋を営む両親の影響で、調理師免許を持つ堀川さん。観光業でも地域に貢献したいと、昨冬から中華そば事業を展開。龍二さんの店で修業し、市内のイベントを中心にキッチンカーで出店してきた。「春の味まつり」では一日に200杯を売り上げた。
理容室を開く物件を、人口が多い味間地域で探していたところ、先輩から、2部屋がつながっている1階テナントを紹介された。入り口が2つあり、壁を仕切れば理容室も、もう一つの夢だった飲食店もできる理想的な物件と感じ、開業を決意した。
今月には同じ建物でリンダリンダの2号店もオープン。男性だけでなく、女性も顔そりができる珍しい理容室だ。店長は粟野真紀さん(36)が務める。理容師免許を持つ堀川さんも店に立つ。
中華そばの営業日は、朝4時から仕込みを始める。9時からは美容師として、はさみを手にする。昼に再び中華そば屋に戻った後、夕方まではまた美容師としてはさみを持つ。衛生管理上、合間にはシャワーを欠かさず、「1日3、4回は浴びる」という。
「味はめちゃくちゃ自慢できる。けれど、本業はもちろん美容師。ぼちぼちとやっていきたい」としつつ、「最終的には良い経営者になりたい。それまでは、ただただ自分が頑張らないと」と覚悟を決めている。
リンダメンダの定休日は日、月曜。