どうすれば健康で長生きできるのか? 「健康長寿」の人にはどんな要因があるのか?―。誰もが思う疑問に挑んでいる兵庫医科大学の研究チームが、同県丹波地域をフィールドに取り組んでいる研究を継続するため、インターネットを介して寄付を募る「クラウドファンディング」を展開している。8年間にわたり、1000人以上が協力中。一定の成果を得ながらも研究費が底をつき始め、継続が困難な状況になっている。研究者らは、「解明には長期間の研究が必要。丹波地域から全国、世界に発信できる研究を成し遂げたい」と協力を呼びかけている。
研究は2015年から同医大ささやま医療センター(丹波篠山市黒岡)を拠点に始まった。健康障害を引き起こしやすい状態「フレイル」や加齢に伴う筋力低下「サルコペニア」の実態を明らかにし、健康長寿に寄与する生活習慣や環境要因を解明することが目的。
フレイルは、身体的なもののほか、物忘れなど軽度の認知機能障害、低栄養などさまざまな要因が重なることで健康障害を招きやすい状態を指し、一見、問題なく見えるものの、実は健康と要介護などの間の状態をいう。
丹波篠山、丹波両市で暮らす65歳以上で、健康な人から要介護1の人を対象に、医師による問診や血液検査、運動機能の検査、骨密度測定など、多岐にわたる検査を行ってきた。血液検査では、年を取っても元気で若々しい人には血液中に「長寿因子」があるのではないかと仮定し、調査を続けている。
検査は無料で、状況に応じて改善のためのアドバイスや診察を勧めることもあり、これまでに1150人が参加。700人超が2度目の検査を受け、継続調査に協力している。チームによると、「老化が進んだ人、進んでいない人、逆に少し若返ったような人など、老化のスピードは個人差が大きく、非常に重要な傾向が見えてきた」という。
研究には、「同じ地域に住んでいる」「生活習慣が近い」など、共通の特性を持つ集団を追跡し、どのような疫病が発生するか、健康状態がどう変化したか、などを観察することで、さまざまな要因との関連を明らかにしようとする「コホート研究」という手法を採用。長期間になるほど精度が上がり、評価も高くなる。
一方で、「資金」という壁が立ちはだかる。データの分析費用や管理費、人件費などは公的な研究費や大学の研究費などを活用して運営してきたものの、年々、獲得が難しくなり、このままでは24年を最後に終了せざるを得ない状況となった。
同大学総合診療内科学の新村健主任教授(62)らは、「長年続けてきた研究を成し遂げ、これからも丹波地域の人々の人生を見つめ続けることを止めるわけにはいかない」と考え、同大学が業務提携している国内最大級のクラウドファンディングサービスを展開する「READYFOR」社を介して寄付を募ることにした。
第一目標の金額は300万円。目標を超え、1000万円に達した場合は、参加者の利便性向上を目的に巡回バスも運行させる。一口3000円からで、寄付額に応じて協力者としてホームページに名前を掲載することや、市民公開講座への優先招待権、活動報告書の提供などを、高額寄付の法人には、チームスタッフによる講演会などの「お礼」を用意している。
新村教授は、「老化をつかさどるものが血液の中から見つかれば、それを調整することで老化を緩やかにできるかもしれない」と可能性を語り、「健康長寿は今の医学においての目標。貴重な研究を続けたい」と話している。
寄付の締め切りは1月19日。「兵庫医科大学 健康寿命 レディーフォー」で検索を。