消えた橋の写真探して 58年前に流出の「廊下橋」 住職も目にしたことなく

2023.12.03
地域歴史注目

1957年(昭和32)、先々代住職の実玄さんの葬儀の際に撮られた写真。霊柩車の後ろに、屋根付きの廊下橋が確認できる

兵庫県丹波市山南町にあり、伝統の厄除け行事「鬼こそ」で知られる常勝寺が、かつて山門前を流れる山田川に架かっていた「廊下橋」の全体を捉えた写真を探している。同橋は今から58年前の1965年(昭和40)の台風で流され、人々の記憶にしか残っていない。同寺には橋の一部が写った写真は3枚しかなく、檀家をはじめ地域住民に親しまれた橋の姿を思い起こしてもらえればと、情報を求めている。この台風の年に生まれた宮崎実康住職(58)は、「私自身は実際に目にしたことがなく、どんな橋だったか見てみたい思いがある。ご協力いただけるとありがたい」と話している。

現在の「普門橋」は、台風の翌年、66年(同41)に架けられた。

廊下橋を渡ると、同寺の本堂に向かう長い石階段が始まる位置関係だった。先代住職の実順さん(87)によると、丸太4本を川に架け、その上に床として短い丸太を交差して並べていた。

スギ皮が貼られた屋根が付いており、雨の日は子どもたちの遊び場になったという。左右の欄干部分には、大人の胸から腰くらいの高さまで板が貼ってあり、文字通り廊下のような形状だったという。

幼い頃の宮崎淳子さんを写した一枚。バックに見えるのが廊下橋

同寺にある写真のうち、1枚は宮崎住職のいとこ、宮崎淳子さん(67)が持っていたもの。自身が生まれた56年(昭和31)の夏に写したと思われ、河原に座る淳子さんの後ろに廊下橋の一部が見える。

橋の床が欄干の外側に少しせり出しており、そこを横歩きして遊んだ記憶があるという。「かっちりしていたけれど、変わった形の橋だなあと思っていた」と記憶の糸を手繰り寄せる。

廊下橋があった場所に架かる「普門橋」=兵庫県丹波市山南町谷川で

戦時中、同寺には各地から多くの子どもたちが疎開していた。実順さんは、同寺に来ていた子ども同士がけんかをし、投げやりになった1人が廊下橋から身を投げたことを覚えている。「川面まで高さがないから、べたべたに濡れただけだった」と、今となっては笑い話になるエピソードを思い出す。

実康住職が天台宗の総本山・比叡山で修行していた時、延暦寺の住職を務めるなど著名な僧侶だった山田恵諦さんから、廊下橋について話しかけられたという。山田さんは常勝寺を訪れたことがあり、「廊下橋を見ただけで、立派な寺と分かった」と話していたという。

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