兵庫県丹波篠山市市野々に、築約130年とされる古民家を改修した、移住希望者のための「お試し住宅」が完成した。市地域おこし協力隊員で、同集落に住む加藤俊希さん(30)が、住民や職人の手を借りながらこつこつと約半年かけて改修した。1カ月―1年程度の長期滞在を想定しており、集落の行事や日役に参加し、住民とコミュニケーションを取りながら「住民のように暮らしてもらう」という。市の空き家バンクに登録し、希望者があれば、受け入れを始める。
摂丹地域に見られる農家住宅(床面積約140平方㍍)で、今で言う3LDK。広い土間や五右衛門風呂が残る。最近の風呂やトイレが付いた離れも隣接。畑もあり、家庭菜園も楽しめる。
加藤さんは、人口減少が著しい集落にあって、空き家の有効活用と人口増加を課題と捉え、所有者の理解を得て4月から改修に着手。10年ほど空き家になっており、柱も傾いていた。
いったん、ほぼ骨組みだけの状態まで解体。住民も協力して、傾いていた柱を起こし、梁も人の力で架け替えた。床は全て張り替え、壁はもとの土壁をねり直して再利用。農家住宅の良さを残しつつ、新たにキッチンも設けた。地元の大芋や福住の職人らが協力し、加藤さんに技を伝授。加藤さんは約半年間、現場に通い詰めたという。
集落の有志がこのほど、お披露目会を開催。多くの住民が完成を祝った。澤山伊知郎自治会長は、「加藤さんは移住してきた時、『家を買ったのではなく、ここでの生活を買ったんだ』と言ってくれた。限界集落に残っているのは絆の生活であり、たくさんの宝物があると気付かされた。次の世代につなげていく、わくわく感がある」とあいさつした。
加藤さんがスライドで写真を見せながら経緯と改修の様子を報告した。所有者の大野(旧姓・西村)久美さん(59)=奈良県生駒市=夫妻も出席。「このような形で活用していただけることに感謝。加藤さんたちの情熱に後押しされた。思い出の残る家を使っていただけるのはうれしいこと」と話した。
加藤さんは、「この家を100年後に向けて保存するのが目的。利用する人には集落の生活を体験してもらい、皆さんには住民として接してもらいたい。使わせていただいた大野さんには感謝。大芋がより元気に、明るい地域になれば」と話していた。