兵庫県丹波市の丹波黒ごま生産組合顧問、芦田美智則さん(72)が、黒ゴマ生産者として、日本特産農産物協会の「地域特産物マイスター」に認定された。ゴマ生産者で全国初。丹波市では丹波栗の河村修治さん(72)以来、2人目。「組合の取り組みが評価された。受賞で関心が高まり、丹波ブランドの一翼を担う『丹波黒ごま』の生産者が1人でも増え、産地の維持、拡大につながれば」と喜びを語った。
国内で消費されるゴマの99・9%が輸入品。国産ゴマは0・1%。黒ゴマはさらに少なく、無農薬、無化学肥料、有機肥料栽培の「丹波黒ごま」は今年度、組合全体で2トンと、超希少品。
初代市長の辻重五郎さんの「合併した丹波市に新しい特産を」に呼応し、2006年に生産者が「振興会」を設立。約60人の会員がいたが、時間の経過と共に下方線を描いた。芦田さんは、14年に組織を再興すべく副組合長として「生産組合」の立ち上げに携わり、翌15年から4年間、組合長を務めた。
この間、うね立て、マルチ張り、種まきの機械化、収穫用バインダーの導入など、省力化に取り組んだほか、知名度アップのために世界的に活躍するパティシエ、辻口博啓さんに売り込みを図り、商品への採用を実現。道の駅丹波おばあちゃんの里のジェラートに使用してもらい、地元産品を地元で味わえるようにするなど、生産、販売両面から組合を盛り立てた。
組合員は取引先のゴマ問屋「和田萬」への全量出荷が義務。15アールの生産者でもある芦田さんも、自身の黒ゴマを全量出荷。同社で焙煎された「丹波黒ごま」を仕入れ、味見用に配るほか、宣伝資材のパンフレットやチラシも、県市の助成を受けて自身が経営する「奥丹波 芦田農園」で作成するなど、身銭を切って知名度アップに努めている。
元県丹波農林振興事務所職員。「県にいたので、振興を手伝わないといけないと思った。私たちの黒ゴマは、環境創造型農業。加古川の源流、由良川支流の上流部に位置する丹波市で栽培するにふさわしい作物」と力を込める。
組合設立時、8・6ヘクタールで5トンの収量があった。現在は半減し、足元は厳しいが、組合員を増やし、「反収100キロで、10トン」の目標を掲げる。「買い上げ価格はキロ3000円ぐらいと良い値段。5アールでも15万円。経費を引いても10万円残る。5アールから始めてほしい」と呼びかけ、「日本の食文化を支える貴重な食材。産地を維持、拡大することは重要。マイスターとして、貴重な国産ゴマ『丹波の黒ごま』の発信に力を入れる。生産者が、再生産が可能な価格で安心して栽培に取り組める環境がつくれるよう微力ながら取り組みたい」と抱負を語った。
ゴマの研究者や問屋、食品会社らでつくる「日本ごま科学会」(香川県小豆郡土庄町)から、「ゴマでマイスターを」の働きかけがあり、丹波市長が芦田さんを同協会に推薦した。
県内13人。丹波篠山市には、丹波黒大豆、丹波山の芋、丹波栗を合わせ計5人のマイスターがいる。