兵庫県丹波篠山市沢田の澤田八幡神社(鎌田龍彦宮司)の氏子らが、王地山焼の風鈴「澤田乃宮風鈴」を調製し、氏子や参詣者へ授与している。その清涼な音色で疫病などをはらう魔除けの意味や、平和への願いなどを込めており、鎌田宮司(53)は、「氏子の皆さんに考えていただき、本当にありがたいこと。風鈴の音色は魔を清め、はらう。コロナ禍や、ロシアとウクライナの問題などが起きている時代に、この風鈴が出来たことは、とても意味がある」と話している。
かつて篠山藩の藩窯で、昭和後期に復興した王地山陶器所の陶工による磁器の風鈴は、高さ約5センチ、直径約6センチで、清らかかつ、爽やかな音色が特徴。同神社の神紋「向かい鳩」をあしらい、「丹波篠山澤田乃宮」の名を添えた。初穂料は1つ2000円。
同神社は同市北沢田、前沢田、上河原町、下河原町の鎮守として崇敬を集める。創建年代は未詳ながら、起源は平安時代と伝わり、境内の不動神社には鎌倉時代初期の文治2年(1186)に再建という棟札がある。修験道との深い関わりがあり、篠山城の鬼門の守りとして歴代城主の祈願所にもなっていた。
また、本殿には丹波の名彫物師、中井一統の彫刻が随所に施され、篠山三大奇祭の一つ「鱧切祭」が伝わるなど、有形・無形の両面で高い価値がある。
氏子らは、この神社の存在をより広く知ってもらうことや、宮内庁書陵部に勤める内閣府事務官でもあり、遠く東京から祭礼のたびに通う鎌田宮司が滞在する社務所やトイレの改修費の一部に充てようと、鎌田宮司と共に新たな授与品として風鈴の調製を企画。地元経済の還元も考慮し、役員の西垣隆男さん(79)が地元にある王地山焼で制作することを発案した。
西垣さんは、「役員として関わる中で、他に負けない素晴らしい神社だと分かった。ぜひ風鈴を通して、この神社のことを知ってもらいたい」と話す。
鎌田宮司は、「風鈴というと夏と思われがちだが、実際はいつでも清め、はらってくれる。神紋の鳩は平和の象徴でもあるので、世の中が少しでも良くなるように願っている」とほほ笑んでいる。
祭礼などのほか、随時、希望があれば授与する。