兵庫県丹波篠山市は、閉校した旧雲部小学校の校舎を活用したカフェレストランとアトリエ工房からなる地域コミュニティーの活性化を目的とした複合施設「里山工房くもべ」(同市西本荘)の建物について、老朽化しているため、大規模改修を計画したが、強度の問題から改修(長寿命化)には適していないことが分かり、将来的に解体する方向性を示した。これを受け、同施設内のカフェレストランが、あす22日で閉店する。同施設駐車場での弁当やシフォンケーキなどの販売、アトリエ工房の営業は引き続き行われる。
同施設は、合同会社里山工房くもべ(丸井一正代表社員)が、市から指定管理を受けている。カフェレストランのほか、野菜の直売や、旧教室では職人や芸術家がショップやアトリエを開き、さまざまなイベントも行っている。
カフェレストランがある校舎棟は鉄筋コンクリート造で、建築から65年が経過。2015年に耐震補強を行っているが、市は、より効率的に末永く施設を使ってもらおうと大規模改修を計画。昨年11月―今年2月、改修前の耐力度調査を実施した。
しかし、この調査により、コンクリートの強度などが基準値を下回り、長寿命化に適していない(建て替えが必要な)建物であることが判明。これを受け、市は今年度に計画していた校舎の大規模改修工事をいったん見送り、「時期については地元との協議で決定する」ことを前提に、解体する方向性を示した。
市は同社に、「解体時期が決定するまでの間、施設の使用は問題ない」と伝えたが、丸井代表社員は、「取り壊しが決まった施設で、将来の展望を持って経営を続けていくことは難しい」などとして閉店を決めた。
ただ、「引き続き、地域を盛り上げる事業に取り組んでいきたい」とも話し、現在、駐車場で販売している弁当は出来たての状態で提供することや、さまざまな場所に出向いて弁当や加工品、総菜などを販売していくこと、校舎裏の広場を活用してキャンプ場を開設することなど、次の策としての構想を立てている。
カフェレストランは、旧職員室をリノベーションして13年にオープン。毎週金―月曜日に営業し、16人のスタッフ(役員含む)で切り盛りしている。
地元で採れた旬の野菜をふんだんに使った定食と、昭和の雰囲気漂う店構えが人気を博した。交流サイト(SNS)での積極的な情報発信も効果を上げ、来店者数はオープンから10年以上がたった今でも右肩上がり。昨年1年間の来店者数は1万人弱、繁忙期の10月は1400人を超えた。しかし、それでも慢性的な赤字経営にあり、近年、その幅は縮小しているものの課題になっている現状もある。