待ち鳥、現る けがしたコウノトリ 1年ぶりに丹波篠山へ

2024.05.09
丹波篠山市地域自然

今年4月22日、1年ぶりに東本荘に飛来したJ0499。元気に動き回り、泥の中で採食する=兵庫県丹波篠山市東本荘で(長尾さん撮影)

待ち人ならぬ待ち鳥、現る―。兵庫県立コウノトリの郷公園(豊岡市)の野生復帰事業特別協力員の長尾勝美さん(75)=丹波篠山市=が同市への飛来を待ち焦がれていた「J0499」の個体番号を持つコウノトリが4月22日、同市東本荘に姿を現した。昨年のちょうど同時期に同市東部で見かけたときは、けがで左羽が血に染まっていた。飛ぶことができず、移動はもっぱら徒歩。「このままでは衰弱するか、キツネなどの天敵にやられるか。どうか死なないで」と気をもんでいた。1年ぶりの来訪に長尾さんは、「元気な姿を見せにやって来てくれたのかな」と目を細めている。

個体番号は足環から識別できる。J0499は、2022年5月、豊岡生まれの雌。

長尾さんによると、水が張られた田んぼの中を元気に動き回り、餌を漁っていたという。けがをしていた羽の具合を確認しようと約1時間、望遠レンズを構え、羽を広げる瞬間を待ったが、採食に夢中で確認できずじまいだった。同公園のホームページで目撃情報を検索すると、今年1月下旬まで同県加東市、2月には同県三田市、3月中旬には京都府京丹後市で確認されていることから、「すっかり完治しているもよう」とにっこり。4月29日にも丹波篠山市内の東部で確認できた。

左脇と左羽の先を負傷し、出血が見られるJ0499=同市内で(昨年4月21日、長尾さん撮影)

昨年4月20日、傷付いたJ0499を見かけた。飛べないため、スマートフォンを手にした複数人から追い回されているシーンに出くわした。長尾さんは、「けがをしているので、遠くから見守ってやって」と丹波新聞紙上でも呼びかけた。

出血していたため、2日後の22日には同公園の獣医や飼育専門員らが治療のための捕獲を試みたが、短距離ではあったが飛んで逃げたため、「骨折はしていない」と判断し、しばらく様子を見ることにした。獣医によると、けがの理由の多くは「電線に衝突」という。

その後、5月下旬まで市内で“療養”していたが、それ以後、姿が見られなくなり、1カ月半後、京都府南丹市で目撃されて以後、丹波篠山からは遠ざかっていた。

今回、さらにうれしい出来事もあった。昨年、けがをしていたJ0499に寄り添っていた同い年の若雄J0451が、京丹後市でも行動を共にしていたことが分かり、2羽そろって丹波篠山へ飛来していた。長尾さんは、「3、4歳になると繁殖可能となる。カップル誕生に期待」と、J0499にまるで孫娘を見るようなまなざしを送っている。

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