村上社寺工芸社(兵庫県丹波市山南町篠場)が静岡県の神社で檜皮葺屋根のふき替え工事を行う様子を密着撮影した映画「Connect(邦題=つなぐ)」が、イタリア・モンテカティーニ国際短編映画祭のドキュメンタリー部門で優秀佳作賞を受賞した。映画監督・映像ディレクターの岡部聡さん(47)=同県浜松市=は、「世界に誇れる『日本の美と技』が地元にあるということを、丹波の子どもたちにぜひ知ってもらいたい」と話している。
神社は、静岡県周智(しゅうち)郡森町にある小國(おくに)神社。遠江国(とおとうみのくに)の一宮神社で、地域随一の歴史がある。同社がふき替えを手がけるのは、大正、昭和期に続いて3回目。令和のふき替えは全8棟で、2020―23年の4年がかりで行われた。原料の檜皮は、同神社などが所有する近くの森で採取し、山南町の同社に運んで加工した。
受賞作のタイトルには、職人の技術、知恵、日本的な美が、長い間「つながれてきている」ことをはじめ、「自然と人間」「神さまと人間」などのつながりの意味も込めたという。
SBS(静岡放送)の報道局を経てフリーランスになった岡部さん。静岡には檜皮葺職人がいないこともあって、約40年ぶりの檜皮屋根ふき替え工事に強い関心を持ち、「未来の人たちのため、映像で記録したい」と撮影を決意。職人たちの理解を得ながら、22年の1月から1年間、計約100日間通った。
もともと映画を作る予定ではなく、自身のユーチューブチャンネル「八重雲」で、全10回配信した際、「世界的にも素晴らしい技術では」と感じ、英語のナレーションと字幕を付けて約30分の作品に仕上げた。
「最も印象に残ったのは、職人さんたちのかっこよさ。人から見えない部分も手を抜かない“職人魂”に感動した」と岡部さん。「昔の人が積み上げてきた技術と知恵に驚いた」と話す。
国際映画祭での受賞に、岡部さんは「信じられない気持ち。海外の人にも分かってもらえてうれしかった」と喜び、同社の村上英明社長(68)は、「昔は限られた人だけが知っている職人の世界だったが、最近は広く仕事を知ってもらえる機会が増え、ありがたい」と話した。
山南町での上映会の話も出ている。