映画館「ヱビスシネマ。」(兵庫県丹波市氷上町成松)が、電動ビークル(乗り物)の製造を手がける「ビークルファン」社(本社・東京都)と事業提携を結んだ。同劇場が、同社から無償提供を受けた電動三輪バイクを、丹波市内の駅から訪れる来場客の無料送迎に利用。市内を走りながら改良点を模索し、燃料代と環境への負担が一切かからず、持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する新型車両の展開につなげる。
同劇場を営む近兼拓史さん(62)は、ソーラーパネルを搭載した電動三輪バイクで日本を縦断した経験を持つ。
半年ほど前、近兼さんが、同社が開発した2人乗り電動三輪バイク「リバーストライカー」を試乗する機会があった。最高速度85キロ、航続距離70キロという性能に「素晴らしい」と感銘を受けた。電気自動車に、災害などの非常時に電源として活用できる可能性を見出している点にも共鳴し、事業提携に至った。
新型車両は、リバーストライカーをベースに、ソーラーパネルを日よけのような形で取り付ける構想。航続距離のさらなる延長を目指す。
5月から利用を始める。バイクレーサーの顔も持つ近兼さんがJR柏原、石生駅から利用する客を乗せる。タイヤの傾き方など、運転する中で感じた改良点を同社に挙げる。新型車両はおよそ1年後の販売を目指すという。
近兼さんは「平地が少なく、坂道が多い丹波は良いフィールド。乗った方には空気や風景など丹波の魅力も感じてもらえる。自然豊かな地からSDGsを訴えられるのは素晴らしいことでは」と話している。
送迎利用は事前予約が必要。天候によって相談すること。
近兼さんは、2017年に電気自動車「リーフ」で日本を一周。19年には電動バイクで、東京と京都を結ぶ「東海道五十三次」の街道を走破した。
20年には、上部にソーラーパネルを取り付けて開発した電動三輪バイクで本州縦断に挑戦した。走行しながら充電ができるソーラーパネルにより、電気自転車の航続距離の短さという弱点を解消。外部の電源に一切頼ることなく、3808キロを走り切った。