心くすぐる“顔”ある陶器 陶芸家・青葉聡示さん 連載「丹波篠山 工芸と人と」

2024.06.11
地域注目

人気の「しげおカップ」

「AOBA  POTTERY」青葉 聡示さん(37)=兵庫県丹波篠山市東吹=

コップに、皿に、箸置きに、顔、顔、顔―。視線を感じるような類のものではなく、愛らしく、にんまりしてしまう「顔」が施された陶器。クリーム状の化粧土で装飾して焼き上げる技法「スリップウェア」を用いたシンプルな器。思わず、「かわいい」という言葉が飛び出し、無垢かつ心をくすぐるような作品が並ぶ。

ふんわりとした空間が広がる工房の読み方は、「アオバポタリ」。陶器を意味するポッタリーを、「ポタリ」と表現していることだけでも店の空気感が伝わってくる。

「50年前にもあって、50年後にも残るような作品を作りたい」と語るのは、愛媛県西条市出身の青葉さん。祖父、父ともに陶芸家で、幼い頃から陶器が身近にあり、自然と自身も陶芸の道に入った。愛知県立窯業技術訓練校を卒業後、丹波篠山の窯元に就職。2019年に独立した。

今後は他作家の作品も置いていくという青葉さん

中国青磁などを手掛ける父とは全く作風が違う。「絵を描くことも好きで、自分のイラストを器にしたくて。父は何も言わなかったので、作りたいものを作ってきました」。平面のイラストが陶器という立体を得たことで、現実世界に飛び出してくる。

顔と手足が描かれた「しげおカップ」は、もともとは植木鉢で、しげおの髪の毛を好きな草木で作るもの。顔があるキノコが描かれた皿。腹筋をしている人の箸置きは、その名も「腹筋族」。一転、シンプルかつ洗練されたスリップウェアの「めし碗」など、どれも食卓に並べた時を想像するだけで楽しくなる。

安価な陶器があふれる時代。「私でも安いものの中に『いいな』と思うものがある。作り手としては、んーそうですね。気に入った器でご飯を食べてほしいし、その中に私たちの作品もあって、生活が『ちょっと豊かになったな』と思ってもらえたらうれしい」と言いつつも、「スリップと言えばアオバと言われるようになりたい」とこだわりも見せる。

ちなみに5児の父。家族そろって丹波篠山に根を下ろしている。

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