ベトナム人料理人が母国の料理を提供するレストランが、兵庫県丹波市の「丹波年輪の里」内にオープンした。有名な「フォー」など米粉麺を使った料理と、ベトナムコーヒーなどの飲み物が定番。予約すれば、定番外のベトナム風焼肉や鍋料理、一品料理を提供する。店長は「食べたことがない人に、私の国の料理を知ってほしい。ベトナム人と日本人を仲良しにしたい」と来店を呼びかけている。
店名は「乾杯」のベトナム語「ZO(ゾー)」。首都ハノイから北に50キロ離れた町が出身のグエン・ヴァン・ヒエウさん(30)が切り盛りする。「まずは有名なところから」と、鶏ベースのあっさりスープの「鶏のフォー」(900円)と「牛肉のフォー」(950円)、甘く味付けした豚のつくねと豚肉、生野菜、漬物などがのった細麺に、甘酸っぱいたれをかけて食べるぶっかけそうめん風の「ブンチャ」(900円)が定番。近く、南部で人気の米料理「コムタム」も加える。甘辛いたれに漬け焼いた豚肉、目玉焼き、なますなどをご飯の上にのせた庶民の味。
北部出身だが、飲食店で働いたのは南部で、南北の料理を作れるのが強み。辛さはなく、辛さを足したい人には、別添えの唐辛子などを加え、調味する。
店内にステージを設け、ギターを置いている。子どもが遊べるスペースもこしらえた。「メニューはどんどん変わっていく。料理をきっかけにベトナムに興味を持ってほしい」と願う。
20歳から2年間、同国第2の都市、ホーチミン市で親戚が営むリゾートホテルで調理を担当した。日本人旅行客が多く、日本語を学ぼうと、8年前に留学生として来日。大阪市内のステーキハウスでアルバイトをしながら約4年、語学や文化を学んだ。来日時は、帰国して自国で日本人相手のビジネスを、と考えていたが、日本が気に入り、日本で飲食店を経営する夢を抱いた。
新型コロナ禍に専門学校を卒業、飲食店に就職口はなかった。東大阪市の倉庫で働いていたところ、元同僚の日本人に同物件を紹介され、夢を応援してくれるこの同僚が店を任せてくれた。「大阪と違って人口は少ないけれど、競合店がなく、ベトナム料理を初めて食べる人に広められる」と考えた。
現在は単身赴任。「皆さんに味を気に入ってもらえたら、大阪に住む日本人の妻と子を呼んで丹波で暮らしたい」と穏やかな笑みを浮かべた。
午前11時―午後3時、同5時―10時営業。月曜定休。
昨年12月末時点で、丹波市内に559人のベトナム人が暮らしている。国籍別で最多。