兵庫県丹波市氷上町成松市街地にある甲賀山にすむ、人の靴を餌と間違え、子ギツネに与えるとされる「靴泥棒」のキツネ。昨年6月、初めてキツネによる大量盗難が発生し、1年がたった。今年はどうかと、現場をたびたび訪れたが、昨年のような散乱は確認できなかった。今もキツネはすんでいる。キツネの身や生活に何か変化が生じたのだろうか。
昨年6月中に記者が確認しただけで200個ほどの靴が同山周辺で見つかった。今月5日に現場を訪れた際、山頂にある広場、柵で囲まれた丹波市の配水池内で片足分十数個、柵の外で3個を確認した。うち比較的新しいものは1個。傷みや落ち葉、泥のかかり具合から、ほとんどが昨年夏に盗まれ、回収されていないものと見受けられた。
28日までに5度登ったが、数は増えなかった。念のため、山頂だけでなく、昨年、たくさん確認した林の中も捜索。目を凝らして探し、スリッパ、サンダルを計3個見つけた。今季盗難分かは判断がつかない。
昨年、キツネが持ち込んだ靴を6月だけで50個回収した、同山東斜面中腹にある通所介護施設「デイサービス 不知庵」の植野誠浩管理者(40)によると、今季は6月初旬に子ども用サンダルを1個見つけたきり。昨年は毎朝、敷地内に点々と落ちていた。敷地内でキツネを頻繁に見かける。親ギツネなのか、子ギツネなのかは、はっきりしない。
キツネは3月下旬―4月初旬に子を産み、親は8月下旬まで餌を与えるため狩りに出る。科学的に解明されてはいないが、靴に付着した足の臭いに含まれる油分が微生物によってたんぱく質が腐った臭いになり、餌と間違えるという説がある。
同公園を掃除する氏子によると、今年5月末までに燃やすごみ用袋大1・5袋分の靴を捨てたという。山頂で見つけた人が回収した総量だ。それ以降は「ない」という。5月回収分は昨シーズン分を多く含んでいるとみられる。今季も「盗まれた」と悔やむ人があり、盗難がゼロになったわけではないが、被害は減っているよう。
昨年だけの出来事で終わるのか、これから被害が頻発するのかはキツネ次第。盗難予防策は、屋内に片付けることだ。