兵庫県内では丹波市でのみ生息が確認されている希少な淡水魚、ホトケドジョウの保護活動に取り組む団体「丹波地域のホトケドジョウを守る会」(山科ゆみ子会長)が、「みどりの日」自然環境功労者環境大臣表彰を受賞した。2006年の団体設立以来、継続的にフィールド調査を行っていることや、環境学習として小学校で飼育してもらうなどの普及啓発活動などが評価された。山科会長(75)は、「20年近く続けてきた活動が評価されたと思っている。絶滅だけは防がないといけない。今ある自然環境を後世に残していかないと」と話している。
月1回、水質調査や個体確認、稚魚の目視確認のほか、生息地内の生き物調査、局所的な絶滅を防ぐために個体の一部を別の場所に移す「危険分散地」を確保するなどしている。メンバーは小学生―80歳代の30人。
山科会長は1990年代前半の、青垣いきものふれあいの里(同市青垣町山垣)を立ち上げる際の準備委員の一人で、魚類学者とのつながりからホトケドジョウを知ったという。研究者と共に調査や保全の活動に励んでいたが、年々、個体数の減少を実感していたという。
絶滅の危険性を感じたため、親交があった同県丹波篠山市出身の京大名誉教授で丹波の森公苑長を務めた故・河合雅雄さんに相談。河合さんを顧問に迎え、自然愛好家らで同会を設立した。当時、希少なホトケドジョウを狙うマニアがいたという。
懸命な保護活動にもかかわらず、個体数が減っている実感があるという。豪雨などで生息地が埋まってしまうこともあり、危険分散という方法を取っている。その際には、DNA汚染を防ぐため、加古川と由良川の水系ごとに放流している。
河合さんが、絶えず「放っておくと絶滅してしまう。丹波の自然を守らないといけない」と話していたことが心に残っていると話す山科会長。実際、近くで生息を確認できる淡水魚の種類が減っていると感じている。「子どもたちに、ホトケドジョウが貴重であることを伝え続けたい。私たちも、子どもたちとの関わりの中で学ぶことがある」と話している。
【ホトケドジョウ】 日本の固有種で、環境省レッドリストでは絶滅危惧IB類(近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)、県レッドリストAランク。成長すると全長約6センチ、口ひげが4対8本、体全体に小さな暗色点がある。名前の由来は、吻(ふん)(口)が尖っていない、優しそうな顔立ちに由来しているとされる。青森県を除く東北以南の本州に生息し、兵庫県丹波市の加古川水系が最も西側に位置する。湧水周辺の水草が生い茂る湿地や、流れが緩やかな小川や水田横の水路などに生息し、水生昆虫や藻類などを食べる。近年、土地開発などで生息できる環境が減り、兵庫県内では丹波市内6カ所でしか生息が確認されていない。市内にも生息する「ナガレホトケドジョウ」とは、体色や暗色点の有無で識別できる。