兵庫県丹波篠山市は、サクラやモモなどバラ科の樹木を枯らしてしまう特定外来生物「クビアカツヤカミキリ」が市内に侵入することへの警戒を強めている。5月下旬―8月中旬が成虫の発生時期。市は、「被害を防止するには、なによりも早期発見、早期防除が重要。成虫やフラス(幼虫が排出する木くずが混ざったふん)を見かけた場合は、写真を撮るなどして情報提供を」と協力を求めている。
クビアカツヤカミキリの幼虫が、サクラ、モモ、スモモ、ウメ、サクランボなどバラ科樹木の内部を食い荒らし、枯らしてしまう。ウメやモモなどの果樹園に甚大な農業被害をもたらすほか、被害に遭った木は連鎖被害防止のため伐採する必要があるため、桜並木を全て切り倒した事例も国内で報告されている。
成虫1匹当たりの産卵数が平均350個と非常に多く、繁殖力が強い。また、飛翔力が高く、移動距離は年間2―3キロとされ、被害が急速に拡大し激甚化している要因になっている。車や鉄道に付着し、長距離移動してしまう可能性も懸念されている。
国内では2012年に愛知県で被害が確認されて以降、埼玉、群馬、東京、大阪、徳島、栃木、奈良、三重、茨城、和歌山、神奈川で報告されている。県内では、一昨年6月に明石市で成虫と被害木が確認されて以後、神戸市、芦屋市でも相次いで被害を確認。直近では、昨年7月に西宮市で見つかった。
丹波篠山市では現時点で成虫や被害木の報告はないが、市は、「いつ入って来てもおかしくない状況」といい、「サクラは市木であり、学校や地域、観光エリアのシンボルツリーになっていることも多い。河川沿いの桜並木は、丹波篠山の美しい田園風景を想起させる大切な景観の一つにもなっていることから観光面への影響も免れない」と警戒感を募らせる。
幼虫が樹木内で生育する過程で、フラスを木の外に大量に排出することから、県が作成した防除対策マニュアルの中で、生息確認には、バラ科樹木の株元でフラスを探すことを挙げ、確認しやすい5月上旬―10月の見回りが重要としている。クビアカツヤカミキリのフラスは、ミンチ状や粉状で繊維状の木くずが見られないことが特徴。株元だけでなく、地上から高さ3㍍、直径5センチ程度の枝も注意するよう促している。
特定外来生物でもあるため、法律で飼育や生きたままの運搬・保管・放出などが禁止されている。市や県は、成虫や幼虫は見つけ次第、捕殺するよう求めている。
【クビアカツヤカミキリ】 カミキリムシ科。成虫は体長2―4センチ。全体的につやのある黒色で、胸部(クビ)は赤色。分布は、中国、モンゴル、朝鮮半島、ベトナムなど。成虫の寿命は1カ月程度で、成虫では越冬しない。樹皮表面や割れ目に産卵する。10日前後でふ化した幼虫は樹皮下を食害し、樹木内で約2年かけて成長した後、蛹化。5月末―7月下旬、羽化した成虫は木の幹に縦に長い楕円形の穴(縦2―3センチ)を開けて飛び出す。