「10年で廃棄」で棚スカスカ 学校図書館で「除籍」作業 捨てても買えず継続利用

2024.08.05
地域注目

新基準で除籍対象の本を取り出し、スカスカになった本棚(奥)と、積み上がる「受入16年以上」の本(手前)=兵庫県丹波市氷上町絹山で

兵庫県丹波市の北小学校で、古い本を処分する除籍作業があった。教師とボランティアが全国学校図書館協議会が定めた蔵書を最新に保つ図書廃棄基準「受入後10年が経過」に照らし初めて実施したところ、対象としなかった文学以外の棚がほぼ空になった。2021年まで、年数による明確な除籍基準がなかった。文学以外の蔵書はほぼ廃棄に該当するが、一斉に清算し大量廃棄しても図書購入予算の制約があり、更新は限定的。基準は参考にとどめ、除籍対象の本の一部を書棚に戻し、“スカスカ”の状態を回避する。廃棄は一部にとどめ、閉架で保管する。

同協議会基準の遵守義務はない。同協議会によると、全国的に学校図書室の本が古いままで問題に対処するため、「10年」を打ち出したという。

蔵書約7000冊のうち7―8割を占める文学や物語は、時代の移り変わりの影響を受けにくいとして対象から外し、新しい知見により、内容が変わりやすい百科辞典や歴史、科学、産業などの蔵書を点検した。

▽受入後16年以上経過=廃棄▽同11―15年経過=保留▽同10年以内=継続利用―の仮基準を設け、1冊ずつ受け入れた日付により仕分けした。「受入10年以内」の本は1割に満たなかった。10冊以上のシリーズ本が丸ごと「16年以上」というのが珍しくなかった。「氷上郡(現丹波市)氷上町立北小学校」の印が押された20年以上前の本が目立ち、昭和の本もあった。

除籍対象の百科事典(全12冊、2004年受入)は、4年生が百科事典を学ぶ際に現物がないのは不都合と、除籍せずに本棚に戻した。最終的に、教師が個々の本を除籍するか否かを判断した。図書委員の6年生らも「古いけれど、人気がある本」を廃棄対象から外した。

同校の年間図書予算は約16万円。年間100冊ほどを購入する。除籍を見送った百科事典の第3版(18冊)は12万円。高額で、購入しづらい。

仕分けに参加したPTA副会長の細見志江さん(51)は「ここまで棚がガラガラになると思わなかった」と驚き、「基準通り廃棄すると、本が減り過ぎる。傷んでいるわけじゃないので、少し内容が古くても棚に本があった方がいい。全部の小学校に最新の本をそろえるのが難しければ、学校間で図書を融通することを考えるのも一策」と話していた。

アドバイザーで仕分けに関わった岡山県西粟倉村立図書館長を務めた経験がある社会教育士の蔦木伸一郎さん(39)は、「古い本が多いことが可視化された。市内の学校はほぼ同じ状況だろう」と言う。「兵庫県は、学校に司書を置く取り組みも進んでおらず、図書室への関心が薄い。図書室を充実させるか市の図書館で蔵書に力を入れるか考えた方がいい」と助言した。

昨年まで除籍作業は、教師だけで行っていた。図書館をより魅力ある空間、居心地のよい場所に、と学校近くでブックカフェを営む足立真実さん(43)が、地域住民と共同で図書の整理をしようと提案。ボランティア、PTA役員、教師、市立図書館司書ら10人以上が参加した。

同協議会によると、学校図書購入費は地方交付税で措置されている。小学校は学級数に4万700円をかけた額が目安。同交付税の使途は自治体の裁量のため、図書以外に使われることはままあるという。

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